あやしい探検隊スペシャル

●まず登場していただいたのは「あや隊」料理長のリンさんこと林政明さんに「あや隊」隊員の食の好みを聞いた。

「基本的には椎名さんは麺類好み。一日の食の中に必ず麺を欲しがるんだ。夜一杯飲んでるじゃない？　すると、「リンさん、今回のキャンプ、麺関係はどうなってる？」って聞くの。だから「明日の朝がカレーうどんで明日の晩がスパゲッティ。で、明後日がヤキソバです」とかいうと、「オー、よしよし」って感じ。野田さんはご飯がないとダメなの。ご飯食わないと食べた気がしないって。炊き込みご飯でもいいし、ちょっと余分に炊いといてあげて「野田さん、ご飯もあるよ」って。沢野さんは、時々、「たまにはガーリック・トースト食べたいなぁ」なんて言いだすんだよ」

●そのリンさんも、実は3代目料理長。椎名誠さんは語る。

「3代目ってのが一番えらいの。昔の東映のヤクザ映画でもそうでしょ。2代目は、だいたい店潰したりね。我々の初代は沢野ひとしでした。沢野はカレーと豚汁とけんちん汁の３つしかないの。材料がみんな同じで、ジャガイモ切ってニンジン切って、肉入れて、途中まで全く同じ。それにカレー粉入れればカレーで、味噌入れれば豚汁。けんちん汁なら醤油入れる。だから3日たつとメニューが無くなる。2代目は山と渓谷社の三島悟ってやつで、沢野と違ってレパートリーが広いの。調味料もいろんなの使うんだけど、だいたい辛いの。彼は酒飲みだから酒の肴を作るんだ。だから辛いんだけど、辛いものはメシにもあうからね。沢野より幸せだった。それでリンさんが3代目になったんだけど、彼は本職の料理人だからね。もう、沢野や三島の比じゃない。最初は驚きましたよ。なんてったって、変なものが入ってないし、ちゃんと包丁で切ってあるんだから。今までは砂やら蚊取り線香やらが入ってたこともあったからね」

●キャンプの醍醐味といえばやはり焚き火。あや隊流焚き火術を椎名さんが語る。

「初期のころはできるだけ大きな火を激しくいつまでもというようなことで、薪を持ってくるのが大変で暇が無いわけ。疲れるんだ。で、火の回りで踊ったり。最近は熱源としての火という意味の方が大きいから、あまり大きな火は作らなくなったね。あや隊はいろんな分野の人がいるから、それぞれ山の焚き火、川の焚き火、海岸の焚き火、里の焚き火、いろんな流派があるんです。渓流の焚き火の人は生木、濡れた木なんかをね、上手に使う術を知っているし、マッチ5〜6本で火を付けることができるし、それから今度は、割と材料が豊富な海派の連中は流木をただ横にドローンと並べて、端っこに火を付けてね、風が吹いてくる方向に、どんどん向けて、それで燃えてったらそいつを移動させてくっていう風な、かなりぞんざいな焚き火をするしね、色々なんですよ、まあそういった、各流派の連中が集まってきて、酒を飲みながら、その火で何かを焼きながら、そこで話をしていると、日頃の構えが少しずつ消えてくというか、素直になってくんですね、心根が。人生的なものがあるんですよ。最近は僕はそういうのが好きだなあ」

●最近あや隊のメンバーからは「年をとった」というせりふが多く聞かれるようになってきた。あや隊の今後を椎名さんに占ってもらう。

「みんなまあ、アウトドアのプロの連中ですから、歳をとったら歳をとったなりの、もっとしみじみとした、地球と一体化していくような、本当にあやしいキャンプが出来るかもしれない。でもねえ、60、70になってザック背負って、「じいさんまだやってるのかよ」って言われるのもねえ、ちょっとなんか、哀れを誘いますからねえ。でも、『さらばあやしい探検隊』ってタイトルを、僕は出したいんですよ、いつか。それは次かもしれないし、8冊目かも知れないし、へたすると25冊目ぐらいになるかも知れないけど。でもそれを書くのがひとつの夢ですね、ただ、本当にさらばしちゃうとね、寂しいから、すぐ、『帰ってきたあやしい探検隊』を書いてね・・・」

●野田知佑さんもこんなことを言っていた。

「あやしい探検隊も、みんな歳とっちゃってねえ、昔は体けっこう動いたんだけど、最近は、集まってもただ焚き火して、お酒飲むばっかりでねえ。だからみんな、80ぐらいになったら、どういうキャンプするのかなあ」

●まあ、80を過ぎても続くであろう、あや隊の活動、でも、きっとみなさんは、歳を追うごとにどんどん、あやしい輝きを放つことでしょう。