2002年1月6日

エコプロダクツ2001・取材レポート

 21世紀は「環境の世紀」と呼ばれています。これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄の時代から、もっと環境に配慮したライフスタイルを求める動きが活発になり、企業も環境に配慮しないと、たちいかない時代になったといわれているわけですが、そんな中、環境への負荷を軽減した製品やサービスを一堂に集めた展示会「地球と私のためのエコ・スタイル・フェア〜エコプロダクツ2001」が開催されました。

エコプロダクツ2001

 「エコプロダクツ2001」の会場では、およそ350社に及ぶ、環境に配慮した製品やサービスが展示されていたんですが、そんな中で目立っていたのは、リサイクル商品と、有害廃棄物を出さない企業の取り組みでした。まずご紹介するのは、「ユニチカ(株)」から出品された次世代プラスティック「テラマック」です。同社の「テラマック事業推進委員会」の望月政嗣さんにお話をうかがいました。

ユニチカ(株)望月さん

望月さん「テラマックというのは当社の、植物からできるプラスティック製品の総称です。繊維からフィルムまで色々扱っています。もちろん洋服もポロシャツからユニフォームまであります。従来のプラスティックというのは石油が原料でしたが、テラマックはトウモロコシのような植物が原料です。植物からポリニューサンというプラスティックを取り出して、それを繊維やフィルムに加工しているんです。ですから従来のプラスティックや合成繊維と同じ性能を持ちながら、最終的には土に還る、あるいは堆肥化できるという素材です。この素材の理想的な廃棄方法はコンポスト化、堆肥化ということになりますが、まだ日本はインフラ整備が充分整っていない中、焼却しても全く問題はありません。紙と同じように非常に低い燃焼熱で燃えます。いっさいの有毒ガスは出しません。」

 さて、土に還るプラスティック、「テラマック」ですが、問題は、今のところ、通常のプラスティックよりもコストが高いという点。それでも「ソニー」や「NTTドコモ」などは、環境に配慮して、「テラマック」の使用を決めているわけですが、この素材が広まる為にも、課題はやはりコストの低減化。でも、望月さんは自信を持ってこう語ります。

望月さん「これは下がります。今はまだ樹脂が量産されていないので、割高ですが、アメリカでプラントが完成したところなので、2〜3年は若干高いんですが、5年10年のタームでは今までの石油と同等以下になります。安い石油はいつかなくなるわけですから、コストが逆転する日が必ず来ます。」

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 さて、こうした生分解性素材、すなわち、燃やしても無害、土にも還るものは他にもいくつか出展されていたんですが、中でも、私たちが注目したのが、「ジーザック」という素材でした。「株式会社ジーザックトレーディング」の出口博章さんにお話を伺いました。

ジーザック

出口さん「ジーザックというのはGREEN THE CREATIONの略です。緑の創造ということですね。我々は非木材パルプ、竹、萩、葦など多年草の草類をメインに使っています。そしてそれらを精製するときにも接着剤を使っていないので、火をつけていただければ全く公害が出ずに燃えてしまうし、土に埋めてしまえば100パーセント土に還ります。私どもとしては、発砲スチロールでできている食品の容器を我々の素材で作り替えようということからスタートしたんですが、技術的な問題がありまして、現在すぐに販売できるのは苗ポットですね。従来のビニールのものだと畑に植えるときに抜かなければいけない、抜くときに根を傷つけてしまうという弊害がありましたが、私どものものはそのまま土中に埋めてしまえます。それに引き続いて今、大手のメーカーと開発しているのが、70%が非木材パルプで、残りの30%を一時利用されて残った残渣、すなわちお茶の絞りカスとかコーヒーの絞りカスといった通常産業廃棄物になってしまうものを利用しています。そういったものを電化製品の緩衝材や自販機のコーヒーカップ、食品トレーなどにしていこうということで、順次出していくことになると思います。」

 今月早々には全国の「JA」と取引が始まり、食品トレーや電化製品の緩衝材なども、5月から6月をめどにスタートすると意気込んでいらっしゃったんですが、「非木材パルプ」からなる100パーセント有機生分解する天然素材「ジーザック」。プラスティックに替わる素材として注目です。

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ナチュロック

 さて、今回のイベントの中で、私たちの目をひときわ引いたのが、「ナチュロック」というものでした。会場の入り口近くに、ゴツゴツとした苔むした岩に覆い尽くされ、まるで、何万年も乗り捨てられたような雰囲気の車が展示してあったんですが、実は、この車こそ「ナチュロック」という素材を張ったものだったんです。それにしても、そもそも「ナチュロック」というのは何なのか、溶岩を研究して18年という「日本ナチュロック(株)」の佐藤俊明さんに伺いました。

佐藤さん「ナチュロックというのは我々の会社の名前なんですけど、ナチュラルな石だと思って下さい。溶岩を主体にした石で、溶岩の石というのは土に変わって生き物が生きられる石なんです。どういうことかというと、1200度で山が爆発しますね。そうすると虫一匹、生き物は微生物まで何もいないんですね。それが100年1000年のサイクルで、富士山の麓にいっても青木ケ原の樹海みたいに原始林になっちゃうんです。微生物、コケから始まって原始林になる、その世界を再生するにはどうしたらいいかと考えてできたのがナチュロックです。今、都市河川はあらゆるところが三面張りで虫も登れない。この三面張りの川をどうするか考えたときに、ドイツのビオトープみたいに、その川を壊して昔の蛇行していたような川に戻せるかといったら、絶対不可能なんですよ。今からやる公共事業というのは大きなダムを作るのではなくて、今ある構造物をどうやって生き物が生きられるものに変えていくか、それには凹凸のあるものを川に張ってやればいい。そう考えて作ったのがナチュロックなんです。」

 というわけで、簡単にいうと、溶岩で覆われているような環境を、人工的に作り出そうということで、素材の厚さに応じて、一番分厚いものを「ナチュロック」、板状のものを「ビオ・ボード」、そして 最も薄いものを「ビオ・フィルム」と呼び、その3種類を使い分けて、様々なところにこの素材を張ることで、自然の環境を取り戻そうという試みなんですね。実際、展示場には農業水路をイメージしたU字溝に、「ビオ・フィルム」を貼り付けたものがおいてあって、その中では、元気にメダカが泳いでいました。しかも、ちょっと見には、人工物だとは全く気がつかないほど。こうした試みの狙いを佐藤さんはこう語ります。

ナチュロック佐藤さん

佐藤さん「コンクリートでも玉石でも何十年もたったものは表面にうっすらとコケがはえてます。それをバイオ・フィルム、日本語でいえば生体膜ですが、そういったものを早く作ってやれば、構造物でも早く自然が取り戻せる。生体膜を移し替えるというのが発想です。」

佐藤俊明さんの著書『川は生まれ変わるか』

 佐藤さんのお話では、既に、埼玉県の古綾瀬川や東京でいえば麻布を流れる古川、佐藤さんの地元、富士山麓では山中湖畔沿いの国道や、富士スバルラインなどで、この「ナチュロック」を使った環境整備が始まっているそうです。三面張りの河川だけでなく、ダムや、道路の擁壁、建築物の外装材など、その用途は広く、張るだけで、生き物が棲息する環境を再生できるという画期的な素材「ナチュロック」は、まさに環境再生型の製品でした。
 「ナチュロック」については、佐藤俊明さんの著書『川は生まれ変わるか』(プレジデント社/本体価格1,500円)に詳しく紹介されています。興味を持たれた方、より詳しく知りたい方は、読まれてみてはいかがでしょうか。

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 さて、東京ビッグ・サイトの広い会場の中を歩き回っているうちに、“使えば使うほど環境によい洗剤”という刺激的なコピーを目にし、さっそくチェックしてみたのが、「ピリカレ」という名前の粉洗剤でした。これは、廃油を原料にした洗剤なんですが、この「ピリカレ」を扱うバーバリアンズという会社のブースには、この洗剤を溶かした液体の中で、元気に泳ぎ回るメダカも展示されていました。“使えば使うほど環境にいい洗剤”なんて、にわかには信じられませんが、バーバリアンズ(株)の海野貴史さんの説明をまずはお聞き下さい。

ピリカレ

海野さん「普通の粉石鹸や合成洗剤は使えば使うほど川をきれいにしませんね。汚しますよね。あるいは今話題になっている洗剤のいらない洗濯機は「環境保全型」ですよね。我々が言っている使えば使うほど環境を浄化しますというのは、発酵する、一般的に言うと善玉菌が増えるような石鹸なんです。洗浄力は強いです。でも手荒れはしません。で、流れた油を分解する植物性の善玉菌を増やしてくれますから川も海もどんどんきれいにしますし、ダイオキシンまで分解する力を持っているんです。だから使ったほうが川も海も沼も湖もきれいにするんです。抗酸化溶液という特別な酵素を製造過程で使っているんです。それだけなんです。これだけで、洗濯、食器洗い、風呂・風呂釜、トイレ、ひどい油汚れ、窓拭き、クルマの洗車、入浴剤、歯磨き、入れ歯洗浄剤、こういったものに全部使っていただいて、普通の合成洗剤で25,000円ぐらい、粉石鹸だと35,000円ぐらいになるんですけど、(ピリカレは)2,500円で一年使っていただいてまだ余るはずです。
 ティー・スプーン一杯、5グラムを200リットルから300リットルのお風呂に入れるんです。まず入浴剤として使えます。アトピーとか冷え性とか治ってきます。今度は洗濯物をその浴槽に入れちゃって下さい。翌朝、脱水・すすぎ・脱水だけで大丈夫。さらに水が残ってますからその水で家のお掃除をして下さい。夏場でしたら1週間掃除すればゴキブリ、ダニはいなくなります。それからお風呂場がカビてたらその水をかけといてもらえば、1週間あればカビもはえません。風呂釜を追い炊きしてもらえば釜の中まできれいにします。さらにクルマの洗車。残った水を花壇にあげて下さい。植物につく害虫、全部逃げていきます。ヒマワリとかシソの葉だったら2枚の大きさになります。食器だったら2リットルの水に対して耳かき一杯。ひどい汚れだったら粉を直接クレンザーのように使ってもらえば、素手で全部OKです。」

 というわけで、どうやら秘密は、製造工程の中で入れる抗酸化溶液にありそうなんですが、この技術を開発したのが、北海道・白老町在住の一級建築士、会田伸一さん。元々は、最近、社会問題化しているシック・ハウス症候群を防止する技術として開発されたんだそうです。ちなみに、商品名の「ピリカレ」とはアイヌ語で「きれいにさせる」という意味だそうで、粉石鹸だけではなく、生鮮食品を長持ちさせるポリエチレンの容器や、壁に貼るクロスなども開発されています。そんな「ピリカレ」、興味をお持ちの方は、「バーバリアンズ(株)」03-3394-9654まで直接お問い合わせ下さい。

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 さて、環境に配慮した次世代テクノロジーとして注目の的なのが、自動車業界が取り組む燃料電池ですよね。各種報道によれば、2003年には、各メーカーから燃料電池車が市販されるという話です。でも、具体的にはどうなっているのか、今一つ私たちには分かりにくい分野ですよね。そんな中、「エコプロダクツ2001」の会場で、バスの写真が大きく飾ってある、燃料電池を応援するNPOを見つけたので、早速、お話を伺うことにしたんですが、実は、既に燃料電池のバスは実用化に向かっているようです。「燃料電池NPO法人PEM-DREAM」の坂本一郎さんにお話をうかがいました。

坂本さん「バスは今、トヨタの御殿場のテスト・コースを走っています。公道で走るようになるのは2002年の後半と聞いています。自動車メーカーは一台の乗用車を売るよりもバスを走らせたほうが普及効果が大きいと考えてますので、とりあえず東京の周辺で一台走らせて、続いて地方の自治体で走らせるようにしたいというのが戦略のようです。」

 それにしても各メーカーの燃料電池車、方式の上では、まだばらつきがあるようです。

坂本さん「まだひとつの方式には決められないんです。例えばヨーロッパやアメリカはメタノールがいいといっていますし、水素そのものがいいという立場。日本とアメリカのGMあたりは、ガソリンから水素を取り出すのが既存の自動車のためにもいいという立場。ですから地域によって、合った方式で燃料電池を開発しようという様な合意ができていると思います。日本の場合にはトヨタとホンダが独自開発で技術を持っています。ホンダは水素オンリーの考え方で、水素の生産そのものも砂漠の方でやってしまおうという風に、踏み込んでいます。カリフォルニアで今、試験中です。トヨタはGMと組んで、既に走っている5億台のガソリン車を考慮に入れて、ガソリンから水素をとりだす方式を開発している最中なんです。」

 どの方式を採用するにしても、廃棄ガス・ゼロの夢のクルマ、一日でも早く実用化して欲しいと思うんですが、やはり、少なくとも最初のうちは、値段が問題になるのかもしれませんね。この分野、ザ・フリントストーンとしても、今後も詳しく追いかけてみたいと思います。

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 さて、エコな取り組みをしているのは、大企業やベンチャーばかりではありません。会場内のブースで、「エコアス馬路村(うまじむら)」というユニークな名前の団体を見つけたんですが、ここには、林業に立脚した小さな村の明日の姿がありました。お話は(株)エコアス馬路村の讚井しおりさんです。

讚井さん「高知県の馬路村という、人口1300人の小さな村なんですが、村の96%が森林です。で、今その森林が山での仕事がなく人の手が入らないため、荒れはじめているんです。このまま行ったら、馬路村が地図から消えちゃうということで、何かしなければと。今、木を植えても3世代かかります、大きな木になるまでには。だけど、そのような道をつけていかなければいけない。山での仕事を増やして森が元気になれば村も元気になるということで、第3セクターの会社を立ち上げたんです。その中で山の事業化、加工化というのがあります。事業化というのは森の整備です。加工化というのは間伐材を有効利用してお金に換われば、それを山に返せる。そこで、今回、間伐材を使ったお皿を作ったんです。馬路村の方に電話、メールを頂ければ産直でお届けします。」

 過疎の村の中には、公共事業に頼ったり、それによる林業補償や漁業補償に頼ったりしているところが少なくないんですが、馬路村は、かつて林業で栄えた村の活力を、もう一度取り戻そうということで、あえて、時間がかかる取り組みを進めています。でも、この取り組み、新しい農林水産業の姿を示唆するものになるかもしれません。詳しくは「(株)エコアス馬路村」(電話:08874-4-2535、FAX:08874-2-1911)までお問い合わせください。

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 さて、今回の「エコプロダクツ2001」レポート、最後にご紹介するのは、環境教育のプログラムに取り組んでいるコピスという会社です。この会社では、子供向けの環境教育用ネイチャー・ボード・ゲーム「オークライフ」を発売しているんですが、一体どんなものなんでしょうか。「(有)コピス」の菊池明子さんにうかがいました。

菊池さん「このゲームはナラの木に集まるいろんな生物が登場するゲームです。年輪をかたどったボードの上に、いろいろな生き物のカードを出していくんですが、食物連鎖の順番で出していったり、季節に合わせて出していったりするんです。」

 「オークライフ」は、遊んでいるうちに、生物の多様性や、食物連鎖、季節の移り変わりを実感できるというゲームなんですが、このゲーム、実はザ・フリントストーンのグリーン・セイバー、じいさんが買って帰って実践してみました。じいさん曰く「1本のナラの木を舞台にした季節と生き物の関係がよくわかる。季節の移り変わりや食物連鎖を考えながら手持ちのカードを減らしていかなくてはいけないので、勉強になる。最初、ルールに戸惑うので、熟知している人と一緒にやるか、コピス主催の講座に参加するのもいいかも。また、自分たち流にアレンジしてやってもいいと思う。環境教育の一環として小学校で取り上げて欲しいな〜」ということだったんですが、実は、コピスでは、このゲームを販売するだけではなく、これを使って、実際のフィールド・ワークも行なっているんです。

菊池さん「ある小学校に実際にうかがってゲームをやってから自然の中で観察をするということをやったんですが、なかなか今の子供たちは身近にいる生き物の存在に気づいていないということがあると思います。でも、このゲームの中で実際に登場するコナラシギゾウムシは、ものすごく小さくてよほど注意していないと気づかないような虫なんですが、実際に森に観察にいくとドングリに穴が開いていて、そのドングリを割ってみると、中からコナラシギゾウムシの幼虫が出てくる、なんてことが、このゲームをやっているとわかるようになるんです。」

 21世紀を本当の意味で「環境の世紀」にするには、これから未来を担う子供たちの教育は欠かせない分野。遊びながら、自然の営みを知るというこういったゲームや、付随するフィールド・プログラムは、これから、ますます重要性が増すのではないでしょうか。

●エコプロダクツのホームページ:http://www.eco-pro.com/
 出展内容やシンポジウムの紹介、出展企業・団体の一覧やリンク、また、会場を訪れた小・中学生の感想なども見ることができます。是非ご覧ください。

■このほかのエコプロダクツ・取材レポートもご覧ください。

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. HAPPY NEW YEAR / ABBA

M2. NEW DAY FOR YOU / BASIA

M3. NATURAL THING / DOOBIE BROTHERS

M4. DO YOU BELIEVE IN MAGIC / RANDY VANWARMER

油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M5. TIME PASSES ON / ORLEANS

M6. DRIVE MY CAR / BEATLES

M7. THE POWER OF THE DREAM / CELINE DION

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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