2002年12月29日

ザ・ベスト・オブ・ザ・フリントストーン2002

 今回は2002年を締めくくる番組恒例の企画、“ザ・ベスト・オブ・ザ・フリントストーン2002”をお届けします。2002年も先週12月22日放送で計51回の放送をお送りし、50名を超えるゲストの方々にご出演いただきました。毎回ゲストのみなさんには、宇宙・地球・自然・生き物・そして人間に関しての“考えさせられる”お話をいただいていますが、その中から特に記憶に残るコメントを抽出し、改めてリスナーのみなさんにご紹介します。

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 まず最初にご紹介するのは、9月1日に放送した回からです。作家のC.W.ニコルさんが丹精込めて作り上げたアファンの森を財団にして、故郷ウェールズの“アファン・アルゴード”と“姉妹森”の提携が実現した時の模様です。そのニコルさん自慢のアファンの森で、アファン・アルゴード森林公園の主任レンジャー、リチャード・ワグスタッフさんとお話をした時の模様から、プレイバックしてみましょう。

C.W.ニコルさん

「今ずっと水の流れてる音が裏にあるでしょ? そういう音は騒音じゃないんです。IT'S BACKGROUND MUSIC。昔から人間は、水の音が聞こえたら水があるということの安心感があるでしょ? だからアルファがあるんです。座るだけでアルファがあるんです。ストレスがとぶ。たき火も同じです。小さなたき火があったら、ぬくもりがある、光がある、安全だということの安心感がアルファを作りますよねえ」

 また、「こうやって木の下に座り、目を閉じていると、まるでパラダイスのようだ」と語るワグスタッフさんは次のようにおっしゃっていました。

「目を閉じてリラックスするだけで、木々の間をそよぐ風の音や鳥のさえずり、昆虫たちが出す様々な音が聞こえてくる。そして、それらは都会で聞こえてくる車やエアコンなどの雑音とは全く違って、風に乗って、優しく運ばれてくる心地よい音ばかりなんだ。わざわざ野生生物を探しに行かなくても、ゆったりと目を閉じて、向こうから来るのを待てばいいんだ」

 このようにワグスタッフさんは話して下さったんですが、ワグスタッフさんがおっしゃる通り、森の中に入ると本当に落ち着くんですよね。

松木信義さん

 でもそれだけではなく、ニコルさんの相棒、松木信義さんに案内してもらってアファンの森を歩いた時に、“森の底力”を思い知らされる出来事があったんです。実は、足もとにたくさん落ちているオニグルミの木の実を見つけて、「この実が何故落ちるのか」という問題を出された私たちが色々な答えを出していると、松木さんが「全然違う」と、こんな風に話し始めたんです。

「木の樹勢、勢いね、木の勢いがいいほど実を落とします。子孫を残す必要がないんです。親が元気だから。気が弱ると止めちゃうんです。子孫を残すために実を結して落とす。弱ってる木、そういうものは大体実が小さくても無理につけとくんだ、子孫を残すためにね。だからようけ、なります。リンゴだって剪定して樹勢を落として、無理にいじめて、弱らせて。でも、弱りすぎてもいい実にならないということで、今度は肥料くれるんだよ。生かさず殺さずというかわいそうな木なんだよ。そうやって、木に負担かけて人間がうまいだのまずいだのって文句たれながら食うわけだ」

 「動物と違って、植物というのはあまり生きているという実感がない」という人もいるようですが、樹木にもちゃんと生きていく上での意志があるんですね。

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ジョン・ギャスライトさん

 また、ツリー・クライミング・ジャパンを主宰し、「木登りを通して自然と友達になろう」と提唱しているジョン・ギャスライトさんは、2月17日に出演していただいた時「樹には教えられることが多い」と言っていました。

「日本語の木は、英語ではTREEだけど、ケルト語では“先生”という意味。アメリカの先住民は“木は立っている人間だ”といった。もともと木はいろんなことを教えてくれたんです。ツリー・クライミングをしていると、木のボディ・ランゲージがわかります。普通森の中を歩くと、木のお尻ばかり見てるじゃない? でもツリー・クライミングをやっていると頭まで行ける。上から下を見ると木の本当の美しい姿が見えるし、根っこのことがわかってくる。森の中の木はいろいろな種類があるけど、根っこはみんな手をつないでます。みんな助け合っているんです。私たちは社会の中でそれを忘れていますね。“僕は一本の木だ”というけど、考えてみると森と同じように、みんなつないでますね、助け合ってますね。人間も助け合いをしないと社会にはならない。そういうことも教えてくれます。このようにツリー・クライミングするといろいろなことが心に生まれてくるし、木はいろいろなことを教えてくれるね」

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 続いては、2月24日の放送に出演していただいた、女優の中嶋朋子さんです。中嶋さんは、倉本聰さんのドラマ『北の国から』の“ホタルちゃん”役であまりにも有名ですよね。そんな中嶋さんは、大の自然愛好家としても知られているんですが、そのルーツは、やはり『北の国から』にあったようです。子役時代、北海道のロケで自然の中での待ち時間が長かったせいで、自然の中での一人遊びを楽しんでいたそうです。

中嶋朋子さん

「北海道のロケでは、自分が立っているところから360度、見渡して遊ぶしかないんですね。空を見たり、鳥が来たり。そんな中で一番身近だったのが虫達だったんです。足下に来るクモとか、熊笹にいる赤いダニちゃんとか。すべてが友達でしたね。普通だったら見ないような、足の運びとかを10分とか見てると愛着も湧くし、新しい発見もあるんですよ。『あ、その足から動いて、次は後ろなんだ』とか見て(笑)。また、自然の中だと都会の虫と違ってカラフルなんですよ。クモも、すごいキレイなライムグリーンみたいな足に、赤い目をしたクモがいて『かわいいー!』と思って、それ以来クモのとりこで、足が細くて長いクモとか見ていると、『おっ!』と思っちゃう」

 こうして、自然の素晴らしさに目覚めていった中嶋さんですが、そんな中嶋さんの人間観を変える出来事もありました。

「例えば、“自然を守らなきゃ”とか、よくいうけど、ちょっとおごってたかなと思ったことがあって。グランド・キャニオンに行ったときに、グランド・キャニオンの影は、キャニオンに出てるんだけど、自分の影がどこにも出ないんですよ。キャニオンのてっぺんにいて、飛び跳ねたり、手を振ったり、一生懸命にやるんだけど、私の影が探せなくて、『なんて、ちっぽけなんだろう。影ひとつ落とすことが出来ない』っていうのにがく然として。それと同時に気が楽にもなったの。私って、まだまだちっちゃいし、自然に守ってもらってるじゃん、って思って・・・」

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高樹沙耶さん

 10月27日には、女優の高樹沙耶さんに出演していただいたんですが、高樹さんはハワイに暮らしの拠点をおきつつ、“B-PLANET”というプロジェクトを立ち上げ、アウトドア体験を通して自然の素晴らしさを体験してもらおうというプログラムなどを行なっている他、自らはアスリートとしてフリーダイビングに挑戦。10月末から11月にかけてハワイ島で開催されたフリーダイビングのワールドカップで、53メートルという、女性の日本記録を打ち立てる快挙を達成しました。そんな高樹さんは、普段からの何気ない自然との触れ合いが何よりも大事だと言います。

「東京の中にでも小さい公園とかはたくさんあるじゃないですか、遠出するのはすごい大変だけれども、例えば明治神宮くらいの大きさの所とか、そういうところに行くだけでも全然違うと思いますね。人間以外のものと対話しに行く、森の木でもいいし、芝生でもいいし、そこに吹いてくる風でもいいし。テレビや雑誌じゃないものと対話をすることを、ちょっと意識してみるだけで全然いいと思いますね」

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荒木汰久治さん

 さて、海に潜ることで人間観まで変えさせられた、という高樹さんに変わっては、7月21日に放送したライフ・ガード、荒木汰久治さんの登場です。荒木さんは、“アウトリガー・カヌー・クラブ・ジャパン”のキャプテンも務め、いつも海と接している生活を送っているんですが、そんな荒木さんにとっての憧れの対象が“ウォーターマン”と呼ばれる“海の達人たち”。

「ウォーターマンというのは海のことなら何でもやってしまうという海の達人ですよね。下に潜ったら20メートル以上潜水してしまったり、20フィート以上の大波に笑顔で乗っちゃったりとか、外洋の島から島へ平気でパドルしてしまったりとか、いろんな達人がいると思うんですけど、そういう人でさえ、どっかの芸能人みたいに鼻高にならずに人々の身近に存在して、自分を決して過大に表現したりもせず、人から尊敬される人間性を持っていてというウォーターマンが理想像だと思うんですが、僕はそのウォーターマンという存在に憧れて色々活動していたとしても、決してウォーターマンにはたどり着けないんですよね。でも、ウォーターマンのライフスタイルは誰でも真似できるんですよ。だから僕はウォーターマンのライフスタイルを提唱したいし、それを少しでも多くの人に感じて欲しいと思いますね」

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 2002年は今まで以上に“地球の危機”が叫ばれた年でもありました。環境破壊に加えて、地球温暖化問題や、エネルギー問題はどんどん深刻になっています。そんな中、10月20日に出演して下さった、東京医科歯科大学、医学部教授で“カイチュウ先生”または“寄生虫博士”として有名な藤田紘一郎先生は、私たちの清潔志向が身体に良くないと警鐘を鳴らしています。

藤田紘一郎さん

「私達の身体は1万年前から全く生物学的にも遺伝子学的にも変わってないんですよ。1万年前の身体そのままなんですよ。私達の体内には、回虫が入ってきた時に活躍する回虫担当免疫細胞というのがあって、ようこそいらっしゃいました、ってお茶を出すくらいの感覚で、結核菌が入ってきてもその担当免疫細胞があったんですよ。そういう身体で今までやってきているのに、回虫は気持ちが悪いって排除しましたよね。そして結核菌も排除して、そうすると結核担当免疫細胞は職を失ったままそこにいるんですよね。その細胞が何をしているのかというと反応しなくてもいい花粉に反応したりして、それが花粉症だし、ハウスダストのダニに反応しなくていいのに反応しているのが、アトピー性皮膚炎ですしね」

 環境の変化によって、人間が本来持っている機能が、逆に私たちを苦しめているなんて、皮肉な感じもしますが、温暖化の進行は、本来、日本ではあり得ないような病気、マラリアやコレラといった病気を大流行させる可能性もあるといいます。特に、マラリアは蚊によって媒介されるわけですが、病原菌を持った蚊を駆除するという方法では、もはや追いつかないともおっしゃっていました。

「蚊の方も殺虫剤に抵抗力のある蚊が出てきているし、バイ菌も薬を飲めばいいと思っていたのがそれに対抗する菌が出てきた。ですから、我々自身がその蚊に刺されても平気な身体になればいいんですね。そういう発想をしないとダメですよ。そういう意味もあって“清潔は病気だ”と言っているわけです。例えば、泥んこ遊びをしている子供は、しない子供よりすごく免疫力が上がって、アレルギーになる率が全然違うんですよ。泥んこ遊びをしている子供の方がアレルギーになる率が非常に少ないんです。生物の世界は頭の良いヤツだけ生き残っているわけじゃないんです。たくましくするにはどうすればいいのかって考えると、教育からなにから全部変わりますよ」

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風間深志さん

 そして、我らが兄貴、冒険ライダー、風間深志さんは次のようなことをおっしゃっていました。

「しかしねー、世の中今、寂しくて不幸な人多いねー。寂しそうだよ、みんな。不景気だし。でも元気になって欲しいね。幸せはね、金じゃないね、物じゃないね、出世じゃない。元気っていうのは、身体をまず健康にすること。健康になるためには自分が身体の中に取り入れる、飲み物、食い物、吸うものを気をつけなければいけない時代だよね。その意味では身体に留意して健康を勝ち得て、そして心に幸せを持つ。その状態を元気っていうんだよって言ってるんだ」

 世の中の一般的な価値観ではなくて、元気な生活を送る。そんな風間さんの持論を実践しているのが、風間さんが主宰する地球元気村。私たちも参加するたびに元気をもらっています。

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松沢哲郎さん

 では、いかにして元気になるか、そんな問いに対しては、京都大学・霊長類研究所の教授、松沢哲郎先生の言葉をご紹介しましょう。松沢先生は、ご存知の通り、チンパンジーのアイちゃんやアユム君の研究にまい進していますが、そんな先生の座右の銘を教えていただきました。

「自分の好きな言葉の中に『千日をもって鍛と呼び、万日をもって練と呼ぶ』というのがあります。まぁ、鍛練ということの中身は何かということでは、それは千日続ければ鍛と呼ぶにふさわしく、万日続けることによって初めて鍛練したといえる、そういうことだと思うんです。それを具体的な一つの目標にして千日を頑張り、万日を頑張る。僕の場合はチンパンジーですね、それぞれの人にはそれぞれの人生の目標があると思うんですけども、夢を追っていくということですね」

 自分の夢に向かって日々精進して生きていく、それが元気につながるということなんですね。

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 さて、2002年のザ・フリントストーンは、沖縄の伝統や文化にも触れましたが、中でも印象的だったのが“BEGIN”のメンバー上地ひとしさんのこの言葉でした。

BEGIN

上地:「じいちゃん・ばあちゃんがよく言ってたことで、今でも好きなのが『ぬちぐすい』ということ。『命の薬』ということなんですけど、いいものを見たり聴いたりすると、『あぁ、ぬちぐすいだねぇ』というんですよ」

比嘉:「それこそ、赤ちゃんが笑ってるのを見ても『ぬちぐすいだね』って。歌聴いてもおいしいもの食べてもそうだし」

 “ぬちぐすい”、“命の薬”。本当に素敵な言葉だと思うんですが、実は、豊かな自然がたくさん残っているように見える沖縄の島々にも、環境破壊の波が確実に押し寄せています。でも、同じく“BEGIN”のメンバー比嘉栄昇さんは、自然の力を信じていると、こんな話をしてくれました。

比嘉:「この自然の中にいると、もう1回自然が復活する時が来るんだろうな、その時が来るのを信じさせてくれる感じがするんですよね。信じさせてくれるものがないと、ゴミ拾うのもむなしくなってくるし、今はこれだけかもしれないけど、100年後、200年後かもしれないけど、戻るだろうという思いはありますけどね」

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  というわけで、1月6日放送分、エコプロダクツ展の取材レポート“エコビジネス・ルポ”で幕を開けた2002年のTHE FLINTSTONE。今日ご紹介した以外にもたくさんのゲストの方々が出演して下さいました。毎年、定点観測をさせていただいている清水國明さん、沖縄の“おばあ”こと平良とみさん、動物行動学の権威、日高敏隆先生や、昆虫写真家の海野和男さん、海洋写真家のボブ・タルボットさんなどから本当に面白いお話を伺ったり、一方では、未分離デザイン研究所・代表の遠藤秀一さんから沈み往く島、ツバルについてなど、地球人として考えさせられるお話もたくさんうかがいました。
 さらに、もちろん2002年もフリント家はたくさん外にも出ました。黒姫のアファンの森以外にも、八ケ岳倶楽部で柳生博さん・真吾さんに念願のカタクリの花を見せていただいたり、“地球元気村 in 吉田町”に参加したり。また、葉山でアウトリガー・カヌーにも乗せていただいたり、ホールアース自然学校のエコ・ツアー体験として富士の樹海を歩いたりと、2002年も本当にたくさんの思い出と学び多き1年だったと思います。
 そしてこれからも、私たちの学びと思い出作りはまだまだ続けたいと思っているので、ゲストの皆さん、そしてリスナーの皆さん、2003年も『ザ・フリントストーン』をよろしくお願いいたします。


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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. WORDS / BEE GEES

M2. MY SECRET FOREST / PAPA JACK MOYER

M3. AT THE SHORE / SUSAN OSBORN

M4. HERE , THERE & EVERYWHERE / THE BEATLES

油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M5. NEW DAY FOR YOU / BASIA

M6. 地球は元気 / 地球元気村の仲間たち

M7. 島人ぬ宝 / BEGIN

M8. BACK AGAIN / TAXIRIDE

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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