2003年2月9日

エリザベス・オリバーさんの動物を救え!

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストはエリザベス・オリバーさんです。
エリザベス・オリバーさん

 大阪府豊能郡にあるNPO法人「アニマル・レフュージ関西」略して「ARK(アーク)」は、ペットの不妊去勢手術の奨励、飼い主への啓蒙活動、迷い犬迷い猫の保護と治療、里親さがし、動物保護法をふまえての行政への働きかけなどを活動の柱にしている団体です。95年の阪神淡路大震災では被災した犬や猫600匹ほどを救済、大変話題になり、現在では400頭ほどの動物たちの世話をしながら、精力的に活動しています。
 今週は、そんな「ARK」の代表「エリザベス・オリバー」さんをお迎えし、現在保護している犬や猫たちの状況や日本人のペット感覚などをうかがいながら、“動物を飼う”ということをじっくり考えました。

●ARK(アーク)といえば、1995年阪神淡路大震災の時に、約600匹のワンちゃんやネコちゃんを保護したっていうことで私は初めてその存在を知ったんですが、ARK自体は1990年にスタートしたんですよね。

「そうですね、震災前ですね」

●キッカケは、どういうことだったんですか?

「その10年程前から、個人で犬、ネコの保護をしてましたが、給料は全部動物の餌とか出さなければいけないし、もし動物が増えたらもっとお金もいりますから、なんとか団体を作ろうと思いました。一番最初はボランティアばっかりだったのですが、どんどん動物が増えて、ボランティアさんたちはスタッフになりました。そのスタッフのために給料を出さなければいけない。そしたらかなり大きな活動になりました」

●そもそもは、オリバーさんのダイニングテーブルで話し合うようなすごく小さなボランティア団体から、このARKに発展していったということですけど、やはり一番大きかったのは、震災・・・?

「そうですね、その時は急に3倍になりました。動物の数もすごく増えました、それと、ボランティア、スタッフの数もすごく増えました」

BEST FRIENDS〜犬と分かちあう人生

●その時のエピソードは、前に出された『BEST FRIENDS〜犬と分かちあう人生』という本の中に、その震災の時の模様も書かれているんですが、そういう災害時にどこか仮住まいとかをするときに、飼っているペットの犬や猫と一緒に住めないから一時的にARKに預かって下さいっていう人が多かったと思うんですが、迷ってしまって飼い主が全然分からなくなってしまって、ARKに引き取られ、里親を待つ犬や猫もあのときはたくさんいたのでは?

「でも、里親になりたい人はね、かなりたくさん出ました。あの・・・震災動物はブームになりました。ファッションになった(笑)。そしたら震災前の犬や猫達もみな里子に出ました。震災に関係なく、歳をとっている犬や障害のある犬もみんな欲しがって、里子に出ました。すごくいい人ばかりいました」

●日本では、“動物シェルター”ってあまり聞かないし、無いじゃないですか。保護活動をやっているボランティアの小さいグループとかっていうのはたくさんありますけど・・・。

「個人でやっているのはありますけど、本当に外国と同じようなシェルターは無いですね、日本は」

●そんな中で99年にARKはNPO法人に認可されたわけですが、今、主にこのARKがやっていることって、どういうことが一番大きいんですか?

「今はもちろん、動物の世話が一番ですね。問題は、スペースとか世話する人の数など限度はありますから、(動物の)全部は受け入れ出来ないんです。だからケース・バイ・ケースなんですね。あと、教育とか、いろんなこともしたいんですけど、ほとんどARKの中は毎日精一杯なんです(笑)」

●そうですよね。たくさんの生き物達がいるからその世話だけでも毎日追われてしまって・・・。

「今、スタッフは30人くらい。でも、動物も犬、猫で400匹以上いますから」

●私、実はARKのホームページをチェックしてきたんですが、現在ARKには、犬200匹、猫100匹、ポニー1頭、ヤギは・・・。

「いま、ヤギはいないです」

●あっ、いなくなりましたか。鶏1匹、豚2匹、そして銀キツネが1匹いる・・・(笑)。銀キツネってやっぱりペットだったんですか?

「それはね、公園で捨てられてたって、警察が連れてきました。多分、ペットショップかどこかで買ったんだと思います。でもあまりなついていないですね。あとチャボもいます。それとウサギも2匹いますよ(笑)」

スウィート・ホーム物語〜オリバーさんと幸せをつかんだ22匹の犬

●(笑)なんか、にぎやかな・・・。本当にノアの箱船のARKっていう感じがしますよね。そのARK、たくさんの動物達がお世話になっているということですが、オリバーさんは、それらの、特にワンちゃんにスポットを当てて、99年に『BEST FRIENDS〜犬と分かちあう人生』、そして去年は『スウィート・ホーム物語〜オリバーさんと幸せをつかんだ22匹の犬』という本を出されていていらっしゃるんですが、こちらの本は“オリバーさんと幸せを掴んだ22匹の犬”というサブタイトル通り、ARKにいる22匹の犬が登場するんですが、それぞれ登場するワンちゃん達、名前がとってもユニークなんですよね。犬なのに、キツネとか、ミスたぬき、ももTOO(これは“もも、も”という意味)というような名前が付けられているんですけど(笑)、これ、一体誰が考えるんですか?

「私がほとんど考えました(笑)」

●全部の動物達に名前がついているんですよね? でも名前はかわいいけど、ARKにいるということは幸せな人生から見捨てられてしまったり、やむを得ず飼い主から離れてしまったワンちゃん達ということですよね・・・。

「もう、みんな最初に入ってきた時は、外傷や皮膚病があったり、心にも傷を負っていて・・・。でもしばらく経ったらみんな顔が変わってきます。安心した顔になるんです。リハビリもしますからほとんど治りますね」

●ARKに来る動物達というのは、どういうケースが一番多いんですか?

「一番受け入れるケースは、虐待です。それと2番目は、例えば飼い主が亡くなったり、入院しなければないとき。それとあとは、保護したけど、自分で飼えないからARKが保護しなければ保健所に連れて行くってとき」

●肉体的な傷というのは、ある程度までは治るじゃないですか。でも人間もそうですけど心の傷は・・・。

「心の傷は一番難しいです」

●そういうワンちゃん達に、里親を見つけるというのはどうなんでしょう?

「もちろん、歳をとっている子と、すごく怖がりな子は精神的な問題ですからね、そういう子達は里子に出すのは難しいですね。お客さんが来ると震えて小屋に隠れるような、そういう子は難しいです」

●また、ARKのホームページでは、一生をARKで過ごさなくてはいけない、犬や猫の“バーチャル・ペット・スポンサー”というのをやっていらっしゃいますよね。これは要するに、足長おじさん?

「そうですね、それはその犬達に障害があったり、すごく神経質だったり、歳をとっていたり、あとずっと治療が必要な動物達は“バーチャル・ペット・スポンサー”に出します。それと、自分でペットを飼いたいけど、マンションに住んでいたり、仕事の関係で忙しい場合ペットは飼えないですから、そしたらARKが世話をしますから、スポンサーとして自分のペットをもって、時々会いに来てもらったり、ホームステイをしてもらったりします」

●じゃ、本当に自分のペットなんだけど、世話をしてくれる人がいるという感じで、様子をチェックしながら・・・。

「ARKみたいなシェルターでは、普通の家と違って、本当にたくさんの犬がグループになっていますから、普通の家に行って1匹になったら本当に幸せになると思います。ずっとシェルターに入っている犬は本当には幸せではないと思います。あと、日本では安楽死のことは、あまり知られていないと思います。保健所で、ガス室で殺処分されるときは本当に苦しんで死にます。でも、安楽死は麻酔なんです。どんな手術でも使うのと同じ麻酔ですから、苦しまないで寝る、その後は心臓が止まる。それは本当に静かで楽ですね。あと、避妊のことも、自然ではないと言いますけど、犬は野生動物と違います。人間の社会に入っていますから、もし避妊しないと犬の場合は6年経ったら1匹から6万匹になる。その6万匹を飼えるのかどうかというと、普通の家だけでは無理ですね」

●それは絶対に無理ですよね。

「それと、もう1つの問題は健康です。避妊しないと8〜10歳になると、乳ガン、子宮ガンが多いですから、早く避妊すればガンにもかからない。健康のためにいいことだと思います。でも、犬は1匹から6万匹ですけど、猫は1匹から45万匹になるんです」

●よく、公園とかで餌が置いてあるのを見ると、「あー、ニャンちゃん達に餌をあげてるんだなあ」って思うんですけど、その一方で、あの猫は避妊手術しているのかな、そうしないと、どんどん増えていくなって思うんですけど。

「お腹をすかせている猫はほとんど子を産めないです。でも餌が充分にあると子を産んでしまいます。本当に餌をあげる人は責任をもって、ちゃんと避妊すればいいんですけどね」

●どうなんでしょう、よく海外のそういう動物病院もののテレビや本を読んでいると、まだ日本って、動物、特にペットに関して遅れているなあ、と。

「日本では買い物に行くときに、よくペットショップに寄って、かわいい子犬を見て、子供のために、いいおもちゃになるとか、そういう感覚、つまり衝動買いですね。犬がどれくらい大きくなるか、どういう性格なのか。あと時間や、お金を考えていない。ペットに対する勉強不足が多いと思います。その勉強不足で結果的に虐待。よく日本では犬は鎖に繋がれているでしょ、それはヨーロッパやイギリス人から見たら虐待です」

●よく、家の前で木の小屋に繋がれていますけど、それを見るだけでも・・・。

「もう、すごい虐待だと思います。ARKから出す犬は、絶対に鎖に繋いでは飼えない。でもフリーではないわけですから、庭に柵を作ったり、あと一番の理想は家の中ですね」

●「スウィート・ホーム物語」のパート2でも、“気になる犬”というタイトルのもと、野良犬、捨て犬、鎖に繋がれた犬、みんなの犬、甘やかされた抱っこ犬という5つの章があるんですが、まさに鎖に繋がれた犬っていう部分の話ですよね。

「一番かわいそうだと思う。野良犬よりかわいそう。野良犬は自由。サヴァイヴァーですから(笑)」

●いわゆる捨てられてしまって飼い主を探している、どうしていいか分からない犬もいて、その捨て犬以上にかわいそうなのが、鎖に繋がれた犬。そして“みんなの犬”というのもそこに登場していたのですが、これは野良猫ちゃん達みたいな感じの、みんなが世話をしているような犬ですよね、でもそれは猫の方が多いと思うんですが、日本って。

「最近は野良猫もすごく増えました。餌があったら増えます。それは自然のバランスですね」

●なるほどね、カラスが都会に増えているのと一緒ですね。餌が豊富だからっていう。

「今、アメリカとかイギリスで特に野良猫を捕まえて避妊して、また同じところに離す。それをTNR(トラック・ニュートラル・リリース)というんですが、避妊したら増えないですよね。で、歳をとったらどんどん亡くなる。でも猫が無くなったらネズミが増えるんです。そういう今はTNRの影響でネズミがどんどん増えています。野良猫も増えたら、またいろんな問題があるけど。あまり減ったら・・・、バランスがとれないと」

●どうなんでしょう、例えばちょっと郊外に住んでいる人とかで野良犬とか野良猫、捨て犬、猫を見つけたとき、やっぱり最初に思い浮かべるのは保健所に電話かなあって思っちゃいますよね。

「“野良”と“捨てる”は違いますから。野良犬はなかなか捕まらないと思う。絶対ペットにはなれない、でも捨て犬は可能性があるから。もし1匹飼ってるなら、2匹どうですか? 世話は一緒ですから。日本では1匹の犬の家が多いでしょ? でもイギリスは、ほとんど2匹ですね。犬も猫もみんな一緒がベストだと思います」

●じゃ、もしも、捨て犬や捨て猫を見つけて保護をしようという気持ちがあったら、自宅でそのまま引き取れるような、その覚悟を決めるか、あるいは近くの保護団体に電話をして里親を探す?

「でも、保護団体は、もし名前や電話番号を教えたら、そこに捨てに来るから教えないでしょうね」

●そっかー、捨てに来ちゃうんだ、逆に・・・。

「それが心配ですね。日本の動物愛護団体はほとんどシェルターを持っていない。個人で預かるとか、フォスターホームのようなシステムはありますが・・・。よくARKにも、関東の方の愛護団体を教えて下さいとか、保護したけどどうしたらいい? とか聞かれますけど、シェルターのような場所が無いから、ほとんど受け入れられないんです。そしてARKも限度があるから全部受け入れ出来ない。もう、保健所では毎年100万匹近く殺処分されているでしょ。でも捨てられてる数はその3〜4倍だと思います。その犬達はどこに行ってしまう? ・・・分からない」

●オリバーさん、ARK〜アニマル・レフュージ関西、アニマル・レフュージ関東っていうのは作る計画はないんですか?

「(笑)まず、土地の問題。もし場所と建物とお金があればやりたいですけど、そこまでは難しいです。経理のことを考えないと。ARKでは毎月100万円以上の病院代がかかります、動物は保険もないですから。あと、1番かかるのは人件費です。あの動物の数でボランティアばっかりでは、ちょっと無理ですね。なのですごく経費がかかるんですね」

●そういった意味では、やはり日本では難しい。

「でも行政はね、保健所はすごく予算があります。だから動物愛護団体がタイアップをすれば、いいことだと思いますけど、まだ考えが違うので難しい・・・」

●全く、そのポジティブな考えが無いということではないですよね。これからペットに関して、みんながもっともっと勉強して、こういうことをわかっていって、そして不幸なワンちゃんや猫ちゃん達、特に、私は犬好きなので1匹でもかわいそうなワンちゃん達がどうにかなって欲しいなと思います。オリバーさん達は本当に毎日大変だと思うんですけど、これからも、いろいろなところでお話を聞かせていただきながら、動物達の面倒も、私達の代わりに、ぜひ見続けていただきたいと思います。

「ありがとうございました」

●今日は本当にありがとうございました。


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■NPO法人「アニマル・レフュージ関西(ARK)」情報

ARKでは随時、里親を募集中です。ARKのホームページには、里親になって欲しい犬や猫たちの写真が随時更新されています。里親になってもいいという方は、ぜひ協力してください。

ほかにも「ヴァーチャル・ペット・スポンサー」というシステムもあります。いろいろな理由で里親に出せない犬や猫達の、仮想の飼い主になってもらい、費用を負担してもらう制度。スポンサーになるといつでも会いに行けます。

ARKの情報はホームページをご覧下さい。
http://www.arkbark.net/

■ARK代表、エリザベス・オリバーさんの著書

『BEST FRIENDS〜犬と分かちあう人生』
晶文社出版/1,890円(税込)
 阪神淡路大震災のときに犬や猫を600匹預かったことや、なぜ日本で活動するのか、また、日本における動物保護について考えることなどを綴っています。

『スウィート・ホーム物語〜オリバーさんと幸せをつかんだ22匹の犬』
晶文社出版/1,785円(税込)
 雪山から奇跡の脱出をとげたフレンド、ホームレスの友ハギス…。帰る家のない犬、傷を負った犬たちが、暖かい愛にめぐり合い、いつしかハッピーエンドを迎えていく。オリバーさんが語る犬たちとの出会いと別れ。

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. I'LL BE YOUR SHELTER / TAYLOR DAYNE

M2. WE'LL BE TOGETHER / STING

M3. YOU SHOULD BE HAPPY / STEVE PERRY

M4. YOU'RE MY BEST FRIEND / QUEEN

M5. ANIMAL INSTINCT / CRANBERRIES

M6. NATURAL THING / DOOBIE BROTHERS

M7. SHELTER ME / THE OUTFIELD

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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