2003年8月3日

写真家・高砂淳二さんのナイト・レインボウ〜祝福の虹〜

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは高砂淳二さんです。
高砂淳二さん

 主に南の島の自然や海の生き物などを撮り続けている写真家の高砂淳二さんは先頃、新しい写真集「ナイト・レインボウ〜祝福の虹」を出版。その名の通り、夜に出現する虹を捕らえた話題の写真集です。ハワイに通い続けているうちに「夜の虹」の存在を知り、なかなか出会えない“ナイト・レインボウ”を数回写真に収めることに成功。その神秘的かつ不思議な虹との出会いや、ハワイに伝わる伝統、ハワイの知恵の伝承者のことなどうかがいました。

●御無沙汰しております。先頃、小学館から新しい写真集「ナイト・レインボウ〜祝福の虹」を出版されましたが、ナイト・レインボウ、夜の虹のことなんですよね?

「夜の虹です。普通の虹は太陽の光が雨が降ったところに当たって虹が出るんですが、太陽の代わりに月の光なんですよ。同じようにバーッと大きな虹が出るときもあります」

●私はナイト・レインボウの存在自体を知らなかったんですが、ハワイでしか見られないものなんですか?

「そんなことはないですよ。ハワイはレインボウ・ステイトと呼ばれるくらい虹が多いところですけど、それでも滅多に出ない程度のものです。すごい稀な現象です」

●高砂さんはどうやってナイト・レインボウの存在を知ったんですか?

「ハワイがもともと好きで、9年前くらいから通いだして海や山や滝なんかを撮影しているうちに、カイポさんというカフナと呼ばれる人の一人に会いまして、シャーマンぽい、メディスンマンみたいな人なんですね。昔からのハワイの知恵を伝承している人で、その人に出会ってハワイの古くからの自然観や教えを学んだんです。その人のお話の最後の方で、『淳二、夜の虹を知っているか?』と言われ、夜に月の光で出るキラキラ光る綺麗な虹があるということを教えてくれてたんです。その3日後くらいに、たまたま満月で虹が出たんですよ。そのときはダブルになってクッキリした虹で、身震いしましたね。
 それからの虹との出逢いは不思議で、次に見たときも、また見たいから夜な夜な回っていてなかなか会えなくて部屋に帰って寝ようとしたら、『そろそろ行かなくちゃ!』って急に思ってビーチに行きたくなって、車で行ったんです。そしたら目の前にボーンと現れていたんですよ。
 その次も、カウアイ島でしばらく撮影をしていて街で会った人に『今、火山がアクティブだからあっちで撮ったほうがいいよ』って言われて、急に次の日に飛行機で飛んで火山を撮りに行ったんです。ひと通り撮っていたら何か気になる場所があって、夜に戻ってみたらそこにドーンと虹が出ていたんですよ」

●まさに、虹に呼ばれてますね(笑)。

「呼ばれてますね(笑)。さらに、今年の3月にハワイ島に雨が多いころだから虹を期待して行ったら、8日中7日間がドッピーカンで、仕方ないと諦めていたんです。そしたら翌日は最終日という明け方にワイピオ渓谷の半島の形が夢の中に出て来たんです。その夜にワイピオに行ったら、ドーンと虹が出たんですよ。
 こうやって話してても、うさん臭いと思うかも知れないですけど、夜に星がすごいところに一人で立っていてドーンと目の前に虹があると、ありがとうという気持ちでいっぱいになります。神聖な気持ちになりますね」

●その話を聞いて以来、年に最低1回のペースで見えて、写真にまで収められていますね。

「はい、すごいラッキーだと思います。さっきお話ししたカイポさんの話だと、ハワイアンは自然現象にしても、たまたま雨が降るとか虹が出るとか、そういうふうには捉えない。全部、今生きている世界ともう一つの裏の暗闇のような世界があって、その世界とは繋がっている。夢もたまたま見るだけでなく、サインが含まれている場合が多い。そういうふうに捉えているんだという話をカイポさんから聞いて半信半疑だったけど、ドーンと夢に表れて虹が出たので、もしかしたらあるかもしれないと思いますね」

●ハワイにはアウマクアと呼ばれる守り神がいるんですか?

「ええ、向こうではガーディアン・エンジェルとも呼ばれていますが、もう少し複雑で色んな家系があって、家族ごとに違うんですよ。動物だったり、虹だったり、雷だったり、もともとの大元はその神なんだという捉え方をしているんです。元々生きているトカゲや亀や鮫だけでなく、その辺に転がっている石や虹も命のある、スピリットが宿ったものだと捉えているんですね」

●このアウマクアの話とかを、写真集「ナイト・レインボウ〜祝福の虹」でもエッセイで書かれていてそれを読んでいて、高砂さんと虹って何か関係あるのかな、もしかしたら虹が守り神なのかなって、一瞬、思っちゃったんですが。

「どうなんでしょう、ハワイアンは虹に出会うときは何か意味があるって言っていますので、虹に出会わされているということを考えると、メッセージをこめて人に見せなさいっていうのは感じますね」

●ナイト・レインボウもちゃんと7色あるんですか? 肉眼で見えるんですか?

「はい、ちゃんと7色あって見えますよ」

●写真集のタイトルも「祝福の虹」って付けられていますが、これにはどういう意味があるんですか?

「ハワイの人は、夜の虹は最高の祝福の印、先祖の霊が虹になって現れて、祝福や癒しを与えに来ていると言われているらしいんですね。なので祝福の虹と付けました」

●ハワイ島、カウアイ島、マウイ島の3箇所でおもに撮影されたということで、それぞれの状況、島の雰囲気って違いますよね。虹もそれぞれ違いますか?

「それはあまり感じませんでしたね、そこまで分かるほど回数も見ていないので。カウアイ島で2回、マウイ島で1回、ハワイで2回くらいかな」

●島によって、見やすい場所ってあるんですか?

「カウアイ島はガーデンアイランドというくらい森が多くて雨がすごい。やっぱり虹は雨が降らないと見えないので、そういう面では見やすいと思いますね。カウアイ島では写真に撮らない程度の小さいのは、何度か見ていますから」

●じゃあナイト・レインボウを見たかったら、カウアイ島が1番出会いやすいかも知れない?

「そうですね。あと安直な方法ですが滝にしぶきがかかるところにもナイト・レインボウが現れます。僕は全然考えずにあちこち動いていましたが、カウアイのある滝を偵察して、夜にロープで滝つぼに降りて滝を見たら、そこに虹がかかっていたんです。あれもかなり感動しましたね。そういう滝であれば、雨が降らなくても条件的には満たしやすいです」

●祝福の虹とまでは呼べなくても、ナイト・レインボウは見ることが出来ると。

「そうです、見れます。月の角度と大きさと、水のしぶきの多さが揃えば見れると思います」

●しかし、今では貴重な存在になってしまった「カフナ」の一人、カイポさんとの出会いがすごく大きいですね。

「はい、大きいですね。それまでは海の写真を中心に撮っていて、撮れば撮るほど自然がどういうシステムで成り立っているんだろう、森、海、滝、星を撮っているうちに、これらはどう繋がっているかって不思議だったんです。それからカイポさんに出会って、そういう不思議を聞くとポンポン答えてくれることが多くて。
 それらは昔からのハワイに根付いた知恵なんでしょうね。例えば、月の癒しとか言いますけど、それはどういうことかって聞いたら、満月の夜にビーチに行って裸足になってみろと。そうすると砂がいつもよりシットリしている。それは月の引力で水分が地面から吸い上げられて地面がシットリしていると。そこに裸足で立っていると、水分や地球のミネラルがそこから入ってくるから癒しの一つになると」

●なるほど。科学的なんですね?

「そういう部分もあります。カイポさんもそれに付け加えているんだと思います。ハワイアンは、そういうミネラルを大事にしていて、いろんな石を崇めたりもしています。虹も科学的には光が分解されて7色に分かれるということですが、それだけでなく地面や海に当たることで、下からその光が反射して色をもったミネラルの色が増すんだとか、そういうことも言っていましたね」

●そう考えると、私達は意識していないまでも自然からの恩恵を受けていますね。そういうことを忘れてしまいすぎて、どんどん破壊してしまっていますよね。

高砂淳二さん

「ええ、そうなんですよね。僕もハワイに通いだして、ハワイの昔からの自然観に触れるようになってから、今の人は自然とのバランス感をすっかり失ってしまっていて、全部に命があるって敬って生きる感覚を少しでも思い出せば、もう少しこの世の中が破壊されずに済んでるかなという感じはしますね」

●人が自然を破壊すればするほど、人間自体が破壊されている気もします。月光を浴びて砂浜に裸足で立てば癒されていく、そんな砂浜や海岸もどんどん削られて無くなってしまったら、そういうことすら味わえない、ミネラルも得られなくなっちゃいますよね。

「ええ、そろそろ気付かないといけないですよね」

●高砂さんはハワイに通って、カイポさんに自然との繋がりを聞いて、体験して、その中で日本に帰ってくると、余計に感じることって多いでしょうね?

「多いですね。逆にカイポさんと話をしていく中で、こういう話って日本でもあったよなっていうことを感じるようになりました。例えばハワイアンは木や花を切る時は必ず拝んで、そして何らかのサインでOKをもらって切るんです。でも日本でも、昔はそういうのがあったんですよね。木を切る前は拝んだり、クジラを捕っても供養したり。そういう生き方をしてきたのに、すっかりその感覚を忘れてしまっていて、もう1回日本を見つめ直さなきゃ、という気もしましたね」

●昼間のハワイと、夜のハワイの魅力の違いって何ですか?

「夜の撮影は今まであまりやったことがなかったんです。今回は集中的にやってみたんですが、一人でそういうところに入って行って歩き回るのは、想像以上に真っ暗で、森は道もないし、すごく怖い。印をつけて、自分の足跡を見失わないようにして、人里から木をかき分けて森に入ったり、谷に入るんです。でも目や身体が雰囲気に慣れてくると、本当に広い自然の中にポツーンといて、シーンとしていて不思議なパワーを感じるし、思いきり神聖な気持ちになれます。東京にいるときの精神状態と全く違う自分になれるのは感動モノです。
 あと月が出るとそれなりに明るく、三日月でもかなり明るい。でも真っ暗な時は、いくら目を開けても何も見えない。星は出ているけど、星明かりでは何も見えない。そこにいると、自分の手も足も見えないから、身体は持っているけど、心だけの存在のような感覚になるんです。不思議な感覚です。
 ハワイでは暗闇を「ポ」と言うんですが、「ポ」からスピリットやパワーが出てくると言われていて、その意味が何となく分かりましたね」

●今回ハワイで撮影したということで、これから夏休みにハワイに行かれる方もたくさんいらっしゃると思いますが、その方達に昼間のビーチだけでなく夜の星空もちょっと注意深くチェックすると、また違ったハワイの魅力を味わえるというメッセージになりますね。

「そうですね、全然違いますよ」

●私、実はすごい後悔しているんですよ。ハワイに行ったときに何でもっと外に目を向けなかったんだろうって。耳は傾けているんです、波や風の音に。でも視線を夜空には向けていなかったなって。

「次はぜひ。あと、人里を離れたところがいいですよ。レンタカーがあるなら少し走って、森の遊歩道とかの誰も行かないところにパッと行って、一人で遊歩道を歩くんですよ。ちょっと怖いですけど、慣れてくると思いきり神聖な気持ちになれて、虫や葉っぱや星が、夜もこうやって生きて巡っているんだなという、もう一つのハワイが見れますよ」

●つい最近もハワイに行かれていた高砂さん。この先の夏から秋にかけての御予定は?

「今月、パラオに海の取材で行きます。来月はモルジブで、ちょっと海が続きますね。それからナイト・レインボウの写真展を企画したいなと思っておりまして、ボチボチ動こうと思っています」

●写真展が決まりましたら番組でも御紹介したいと思いますが、それまではこの写真集をじっくり楽しんでいただければと思います。また楽しい旅のお土産話を聞かせくださいね。今日はありがとうございました。

■このほかの高砂淳二さんのインタビューもご覧ください。
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『ナイト・レインボウ〜祝福の虹』

■写真家「高砂淳二」さん情報

写真集『ナイト・レインボウ〜祝福の虹
小学館/本体価格2,400円
 高砂さんの最新の写真集『ナイト・レインボウ〜祝福の虹』はもちろん「夜の虹」の写真がメインではあるんですが、その他にも“夜のハワイ”にスポットを当てた写真がけっこうあって、不思議な魅力を感じさせてくれます。
 

・高砂淳二さんのオフィシャル・ホームページhttp://junjitakasago.com/

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. THE NIGHTMUSIC / CECILIO & KAPONO

M2. RAINBOW CONNECTION / KENNY LOGGINS

M3. I'D CHASE A RAINBOW / KALAPANA

M4. 月の魔法 / 尾崎亜美

油井昌由樹ライフスタイル・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M5. AMERICANOS / HOLLY JOHNSON

M6. BACK AGAIN / TAXIRIDE

M7. OVER THE RAINBOW / KENNY G.

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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