2004.02.01放送

〜写真家・鎌倉文也さんのペンギンに首ったけ〜

 子供のころからペンギンが大好きだった写真家・鎌倉文也(かまくら・ふみや)さんをお迎えし、ペンギンの魅力などうかがいました。鎌倉さんはペンギンを追い求め、南極やニュージーランドなどの生息地に度々赴いています。

●ペンギン写真家といってもペンギンだけを撮っているわけではないんですよね?
「そうですね。本当はペンギンだけで生活していきたいんですけどね(笑)。依頼があれば商業的な写真も撮ったりしています。例えば人がインタビューされているところの顔の写真を撮ったり、商品とか料理も撮ります」

●ライフワークとしてペンギンを撮ってらしゃるんですね。そもそも何故ペンギンなんですか?
「よく訊かれるんですけど(笑)、自分でもどうしてなのかは分からないのですが、それを無理矢理考えて説明すると、子供の頃に見た『サンスター』という歯磨き粉の会社のマークがすごくかわいかったのが原因かなと思っています。その後はペンギンの生態に詳しい、博士みたいな子供だったわけではないんです。多分その頃の頭のどこかに『ペンギン好き』というのが入っていて、それで今も続いているという感じですね」

●いつ頃からペンギンを撮り始めたんですか?
「撮るというのは言い訳みたいなものなんです(笑)。会いに行きたいというのが本音なんですが、たまたま仕事で写真をやっていたので人には『遊んでいるんじゃないよ』という言い訳として写真を撮ってくるという感じです(笑)。初めの1回はとにかく野生のペンギンを見に行きたい、会いに行きたいという気持ちで1回行ければいいかなと思って行ったのですが、どんどんハマって1回行くと足りない、もう1回行って帰ってくるとまた他のこういう時も見たいとかどんどん欲が深くなってしまって、行くたびにまた行きたいと思って今まで続いてしまっているという感じです」

●私達はペンギンのことをどこまで理解できているのでしょうね?
「最近は大分変わってきていて、特にここ10年で大分変わってきました。それ以前だとペンギンというと必ず北極や南極、でも実は北極にはペンギンはいないのですが、もっと広く言うと寒いところだけに住んでいるというイメージをみなさんお持ちだと思うのですが、最近テレビの番組でニュージーランドとか南米とかのペンギンで全然氷や雪のないところに棲んでいると紹介されていて、大分そのイメージは変わってきています。僕ペンギン・グッズを色々集めていまして人形の中にたまにへそがついているペンギンがいたりとか、哺乳類と間違えてつくってある人形があったりとかするんですよ(笑)」

●(笑)。つくっている人が哺乳類と思ってしまっているんですね。
「そのようです。丁度お腹が白いから×(ばってん)を付けてへそを付けたくなる気持ちも分かりますけどね(笑)。
 ペンギンの起源と言われている場所がニュージーランドとされていまして、そこから南極からの海流に乗って分布を広げていったのですが、その海流が一番北まで流れていって途絶えているところが赤道直下のガラパゴスなんですよ。そこにガラパゴスペンギンというのが棲んでいるのですが、その海流がずっと北まで流れていればもっと北半球にも広がっていったと思うんです。その辺は僕は研究しているわけではないので分からないですね」

●基本的には赤道より下、南半球に生息しているんですね。16〜18種類いるということですけど、私もペンギンの世界に少しずつ足を踏み込もうとしているんですが、鎌倉さんもペンギンに会いに行って、そのうちにどんどん興味を持っていって魅かれたという感じだったんですよね。一番魅かれた点というのはなんだったんですか?
「色々ありますね。場所にもよりますがペンギンのいる場所で一日中ペンギンの生活を見ていると、朝、ペンギンが餌をとりに海に出かけていってしまうと巣で守っているペンギンがあまり活動をしなくて、昼寝をして卵を温めていたり、平穏な何もしない時間帯があって、そういう時はあまり撮影をすることもないので、一緒に昼寝をしていたり(笑)ゆっくりボーッとしています。段々日が傾いてきてペンギン達も漁を終えて帰ってくると、つがいの挨拶とか、いざこざや喧嘩があったり、ヒナが必死に親にねだる声が聞こえて来たりですね、そういうのを見て写真を撮りながら1日が過ぎると、本当に充実した時間が流れている感じがしますね。その体験でまたそういうところに行きたいという気持ちが起きますね。でもここ2年間くらいはペンギンのいる場所に行っていないので、そろそろ行かないとまずいなって感じで、健康に悪いなって思っています」

●ペンギンっていっても色々な種類がいるじゃないですか。鎌倉さんが出している写真集の『ペンギン・ラブ』『ペンギン・ファミリー』の中では、色々な種類のペンギン達の名前も明記されているんですけど、昔サントリーのCMで松田聖子さんが「スイートメモリーズ」を歌っていたときのペンギンって何ペンギンなんですか?
「あれはキングペンギンかエンペラーペンギンかそのハイブリッドかもしれないですね」

●その「キング」と「エンペラー」っていうのは、両方とも顔の横のところにオレンジ色が入っている系ですよね。私イマイチこの違いがよく分からないのですが ?
「すごく簡単なんですけど、キングペンギンというのは首元の模様の色がオレンジ色なんですよ。エンペラーペンギンはオレンジは少しあるんですが、段々グラデーションで黄色からクリーム色へと薄くなっていくんですね。それからエンペラーペンギンの模様は人間の臓器の腎臓の形をしているんですよ。キングペンギンはコンマ型なんですよね。全部オレンジ色でコンマの形をしているんです」

●あっ、本当だ。
「キングペンギンだと個体差で大分オレンジ色が違うというのが分かるんですが、魅力的なペンギンはオレンジ色が濃くてキレイなペンギンがモテるらしいですけどね」

●モテるには鮮やかなブライト・オレンジがいいわけですね?
「そうですね。それが成熟したキングペンギンの魅力なんです」

●それがキングとエンペラーの違いだとすると、ギャツビーのCMでムースでガチーンと固められたようなペンギンは何ペンギンですか?
「あれはイワトビペンギンですね。すごくマニアックに言いますとあのペンギンはCMのように氷の世界には棲んでいないんですね。だからあれが氷に突き刺さってしまうのはありえないんです(笑)。ちょっと許せないかなという感じもあるんですけど(笑)、イメージの世界なので・・・」

●ムースであそこまで固まったということで(笑)。最初に鎌倉さんがご覧になったサンスターのマークに使われているペンギンは何の種類になるんですか?
「アデリーペンギンですね」

●クールミントガムは?
「あれもアデリーペンギンだと思うんですが、ペンギンのイメージといったら黒と白だと思うんですが、そのイメージにいちばん近いデザインのペンギンはアデリーなんですよ。黒と白のスッキリとしたデザインで目がパッチリしていてペンギンらしいペンギンです。本当に南極に棲んでいて一番ペンギンのイメージに合うペンギンだからかなと思いますね」

●私は以前に見たことがあるんですが、森の中に棲んでいるペンギンっていますよね?
「はい。ニュージーランドに2種類いるんですが、キガシラペンギンというのとフィヨルドランドペンギンというのがいます」

●それは生活のベースが森であって、餌を取りに行くときは歩いて海まで行くんですね。起源としては森に棲んでいるペンギンの方が古いんですか?
「ルーツ的なペンギンとされているのがニュージーランドのペンギンなので、もともとのペンギンの生活スタイルは海の近くの原生林に棲んでいたのではないかといわれています。ニュージーランドの南島の東海岸にいるのがキガシラペンギンというペンギンなんですが、このペンギンはニュージーランドの5ドル札にもデザインされていまして、日本だとキジやツルがお札の裏に書いてあるんですが、それくらいニュージーランドでは偉いペンギンなんですよね」

●エンペラーとかキングとかロイヤルとかペンギンって高貴な扱いを受けていますね。これだけ長い間ペンギン達の暮らしを見ていると声のトーン、例えばつがいで奥さんを呼ぶ声とか、子供が親におねだりする声とか区別がつくようになるんですか?
「ペンギンの会話やパターンは決まっていまして、大体は決まりで分かったりするんですが、僕がビックリしたというか、頭がいいなって思ったのがキングペンギンのヒナを見ていたときなんですけど、かなり大きなヒナで大人以上に太っているんですが、僕の前では大人と同じ鳴き声で鳴いていたんですね。その後ちょっとしたら親が帰ってきたんですよ。そしたら親が帰ってきた途端に腰を低くして小さくなって、親に向かって『ピヨピヨ』って鳴いたんですよ。急に大人から子供になって『僕はまだ小さいから餌をちょうだい、お母さん、お父さん』っていう感じで」

●ずる賢い奴ですねー(笑)。
「(笑)。ペンギンも生きていくためには親に対して『僕はまだヒナだから餌をちょうだい』っていうのを目にしまして、巣立ちギリギリまでどうにか餌をもらって生きていこうというペンギンの知恵というか、生きていくための手段としてそうなっているんでしょうけど、あまりにも極端なので『こいつー』って思いましたね(笑)」

●(笑)。長年ペンギンを見ていて他に面白い行動とか、気になることやビックリしたことってありますか?
「おそらくなんですが、マゼランペンギンというペンギンがこれから子育てをするというときに、このペンギンはつがいの絆が長く続くタイプのペンギンなんですが、巣にカップルがいたんですね。そこにもう1羽のオスが戻ってきて喧嘩になったんですね。巣にいたカップルの2羽と後から来た1羽でつつきあいをしていたんですが、つつきあいをしている途中から段々メスが反対側のオスの方へ移っていって、そのメスももともと一緒にいたオスを攻撃し始めたんですよ」

●もともとの自分のパートナーとあとから来たオスを攻撃していたのが、段々あとから来たオスの味方になっちゃった(笑)。
「『おぉ、なんだ ?! 』って感じでしたね(笑)。おそらく後から来たペンギンが以前からのパートナーで、多分戻って来るのが遅くて他のオスと一緒にいたところに『なんだ、あなた生きて帰ってきたのね』って感じだったんだと思います(笑)」

●「やっぱりあなたしかいないわ ! 」みたいな(笑)。
「そんな感じに僕は解釈しました(笑)。ペンギンも色々あるんですね(笑)」

●(笑)。鎌倉さんの写真集のひとつに『恋するペンギン』という本があって、そこには写真の脇にラブ・メッセージが書いてあるわけなんですが、ペンギンのお話をうかがっていてすごくペンギンって人間に似ているなと思いました。
「そうですね。見ているとそういうことは本当にありますね。こういう本を作ろうと思って写真を撮り溜めたわけではないのですが、出来上がった写真を見ていくと人間臭くて面白い話が出来そうな写真がたくさんあったので、今回は文章を付けていただいてラブラブな本が出来上がりました」

●『恋するペンギン』はバレンタインデーにピッタリの本ですね。
「そうですね。これからみなさん是非読んでみて下さい」

●鎌倉さんも参加している「ペンギン基金」というのがあるんですよね? これについて教えていただけますか?
「ペンギン基金というのは1986年に、基本的にみなさん無理をしないで身の丈にあった保護活動をしていこうという考え方で、亡くなられてしまったペンギン研究の第一人者の青柳昌宏さんが代表として立ち上げたものなんです。簡単に説明するとペンギン好きがペンギンを守ってあげようというペンギン・ファンドです」

●ペンギン好きがペンギンのために作った保護団体なんですね。
「はい。基本的にみなさん自分の仕事を持っている方達ばかりですので、ペンギン基金専属の事務の人っていうのはいないんですね。みなさん仕事をしながら空いている時間にペンギン基金の活動をしていこうということになっています。新宿にありますので、みなさんペンギン・グッズをひとつ以上持ってきまして新宿に集まりまして、それをオークションして一番高く競り落とした人がそれを買うのですが、そのお金は全部ペンギンのために使われるようになっています」

●それは誰でも参加できるんですか?
「はい、出来ます」

●鎌倉さんはこれからもライフワークとしてペンギンの写真を撮り続けるのはもちろん、直接ペンギンに会いにも行きますよね?
「そうですね。一生色々行きたいなと思ってはいますがペンギンそのものじゃなくてもいいんです」

●といいますと?
「例えばペンギン・レストランというお店が北欧の小さな町にあるとするじゃないですか。そしてその看板がとてもカワイイというかカッコイイとしたら、是非写真を撮ったり見に行きたいですね。そこでご飯を食べて領収書とか書いてもらいたいですね(笑)。そこに『ペンギン』って書いてあったり絵が書いてあったり・・・」

●ロゴのハンコが押してあったりとか・・・。
「ええ。そういうのをもらいに旅をしたいと思っていますし、もちろん野生の色々な所を行きまくりたいですね(笑)。ペンギンは遠いところに棲んでいるので、なかなか行けないっていうのも魅力のひとつかもしれないですね」

●2年も行ってらっしゃらないということで近々行かれると思いますので、その旅行から戻られたらお土産話と素敵な写真をもってお話を聞かせて下さい。私達も写真展にうかがって大きな写真でペンギンを見るのを楽しみにしています。今日はどうもありがとうございました。


■ I N F O R M A T I O N ■

■鎌倉文也さん

『恋するペンギン』

ぴあ/本体価格1,600円

 鎌倉さんの写真に絵本作家の坂崎千春さんが文を付けた、ペンギンをモデルにした6つの恋物語が描かれている写真絵本。バレンタインデーのプレゼントにぴったりの1冊。

『ペンギン・ファミリー』

エクスナレッジ/本体価格1,600円

 『ペンギン・ラブ』の続編として発表された写真集。ペンギン親子の情が感じられる1冊。

「ペンギン基金」

ペンギンをこよなく愛する人々が集まり、ペンギンの保護や研究などを目的に作られた「ペンギン基金」ではペンギンのポスト・カードやグッズを販売し、その売り上げを基金に当てる他、寄付金も募っています。

問い合わせ ペンギン基金事務局
TEL:03-3352-5898

website

http://www12.ocn.ne.jp/~penguinf/

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