2004.06.06放送

エコシップ応援団シリーズ第2弾「F.A.ネットワーク」

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは赤瀬悠甫さん、吉田誠一朗さんです。

吉田誠一朗さん(左)、事務局長・赤瀬悠甫さん(右)


 環境&自然系のNPOやNGOを応援する当番組のシリーズ企画「エコシップ応援団」の第2弾。今回は大学生を中心としたF.A.ネットワークという団体をクローズ・アップ。同団体の事務局長を務める赤瀬悠甫(ゆうほ)さんと吉田誠一朗さんを迎え、自然保護をテーマとした活動内容や6月13日に行なう「NEC学生バードソン」というチャリティ・イベントのことなどうかがいました。

◎自然保護は文系、理系、関係ない
●F.A.ネットワーク(「FIELD ASSISTANT NETWORK」の略)という組織について教えて下さい。
赤瀬さん「僕らは“フィールド”という言葉を“自然保護の現場”という意味で捉えているんですね。現場で働いている人とか、現場で活躍している人達のお手伝いをする人達のネットワーク、集まりと考えています。なので、会員制というわけでもないですし、『誰がF.A.ネットワークのメンバーです』って決まっているわけでもないので、その活動に参加したり関わった人達はみんなF.A.ネットワークという形にしています」

●面白いネットワークですね。作られたキッカケはなんだったんですか?
赤瀬さん「元々、日本大学に自然保護研究会というサークルがあったんです。そのサークルの中で調査や観察会をするだけではなくて、もっと直接的に現場で保護活動をやりたいという人達が、僕らの先輩になるわけですが、その方達がF.A.チームというものを作り上げたんですね。それが87年くらいの話ですね。で、それが89年頃にF.A.ネットワークという組織として、日大の自然保護研究会から独立して、そのあと今に至るという感じです」

●今は赤瀬さんが事務局長をされているんですよね。赤瀬さんで何代目になるんですか?
赤瀬さん「僕は11代目ですね」

●基本的には大学生が中心になっているんですよね?
吉田さん「大学生が中心になってミーティングや活動をしています。事務局の人達も学生ですよね?」
赤瀬さん「そうですね」

●ちなみに赤瀬さん横浜国立大学の3年生で、吉田さんが東京農業大学の2年生なんですよね。大学もみんなバラバラじゃないですか。どうやって人が集まってくるんですか?
赤瀬さん「インターネットを使ったメーリング・リストとか、普通にメールを使って話し合いが活発に行なわれているんですが、それとは別にインターネットを使って呼びかけて、週に1回か2週間に1回くらい神奈川や東京のボランティア・センターで、フリー・スペースといって自由に話し合いが出来る場があるんですよ。そこで会議をして実際に僕らがやるプロジェクトの相談などをしています。
 F.A.ネットワークというのが、もちろん自然保護に貢献したいという目的が一番なんですが、それと同時に学生にとってもメリットにならなければ活動を継続していくことは出来ないと思っているんですね。なので、基本的にはOBやOGとか関係者など、人の繋がりは日本の自然保護業界とはあちこちにあるので、そういうものを通じて『こういう現場がありますよ』という情報をいただいて、僕らがそこで活動を継続できるという風に判断したらやるという形ですね。やはり目的は自然保護のためにというのを押さえたうえで、それを楽しくやっていくためにはどうしたらいいかを考えるということをやっています」

●F.A.ネットワークって会員制ではないし、プロジェクトごとに参加するメンバーも人数も違うので、まとめるのは大変ですよね?
赤瀬さん「そうですね。事務局とはなにかというのが分かりにくいのですが、見えない組織とは言ってもプロジェクトや活動はたくさんあるんですね。それを1カ所に繋いだり、始まりの企画をたてたり方針付けをするっていうのが事務局スタッフの仕事です」

●じゃあ、総元締めみたいな感じなんですね。
赤瀬さん「元締めと言うとカッコイイですね!(笑)」

●(笑)。今、F.A.ネットワークにはどれくらいの人達が参加しているんですか?
赤瀬さん「活動ごとによって大分違うよね?」
吉田さん「そうですね。それぞれの活動で参加人数も違いますね」
赤瀬さん「中心のメンバーだけで10数校も大学があるんですね。全国だったら30〜40校は越えると思います。自然保護っていうと『理系の学生だけ』『専門性がすごく強い』というイメージがあったので、そのイメージを壊してもっと一般の人達も自然保護のもとに、気軽に参加できるようになればいいなという思いから始まりました。なので、文系、理系は関係ありませんし、どんな人でも参加できるように敢えてしてるっていうのはありますね」

◎野鳥を50種類見つけます!
●ここでF.A.ネットワークの具体的な活動内容についてうかがいたいと思います。いくつかのプロジェクトがあるのですが、まずワークキャンプというのがありますよね。これはどういうものなんですか?
赤瀬さん「僕らが活動のフィールドにしているのは、北海道に自然保護の拠点がいくつかあるんですね。そこへ夏休みや春休みに1週間から10日くらい10人ほどで泊まり込みのキャンプをしまして、ボランティアとして自然保護に貢献していこうということをやっています。具体的には湿原に入るための木道が壊れているのを直すというのもありますし、人が入らないように有刺鉄線を張ったりというのもありますし、あとは環境教育プログラムみたいなものを僕らが作ることもありますし、実際に僕らが自然保護の現場で何が必要とされているのかということを見定めて、現地の人と交渉しながら『じゃあ、僕らはこういった形でお手伝いが出来ますよ』というのを、今一番必要とされていることは相手側のニーズはなにかっていうことですから、それと僕らがやれることをすり合わせるという感じですね」

●吉田さんが最初に参加されたのもこのワークキャンプなんですよね?
吉田さん「はい。ウトナイ湖のほうに行って、子供向けの紙芝居作りに参加して2つ作りました」

●私、それをホームページで見ました。
吉田さん「ご覧になりましたか(笑)」

●色々大変だったみたいですね(笑)。でも楽しそうな感じがしました。
吉田さん「作業するのもすごく楽しかったです。自分達も題材を調べるうえで、今回僕はアカゲラについての紙芝居をやったんですけど、本当に知らないことばかりで、生態にしても色々と学ぶことがありましたね。勉強になりました。普段、東京にいると見られないような大自然があって、そういう中で作業をして色々と勉強になりましたし、あと、自然保護というのは人と人との繋がりやネットワークの上で成り立っているということが分かったというのがすごくためになりました」

●じゃあ、実際に自分達がなにかをするうえでおまけのような形で学んでいくことも多いんですね。あとは、リトルターン・プロジェクトというのがありますね。これはどんなものなのか説明していただけますか?
赤瀬さん「はい。リトルターンとはなにかといいますと、コアジサシという鳥の英語名なんですよ。そのコアジサシという鳥は環境省のレッドデータブックで絶滅危惧種二類に指定されていて、冬の間はオーストラリアにいるんですけど、夏は日本にやって来て子育てをするという鳥なんですね。ただ、最近は河原とか砂浜とかそういう自然の河川が少なくなって、もう子育てが出来なくなってしまったんですよ。で、子育てが出来る場所は東京都大田区に森ヶ崎水再生センターという下水処理施設があるんですね。その屋上がやたらと広いところで、すぐ近くに魚も取れるちゃんとした干潟もあるんですよ。その広いところに2001年だったと思うんですが、コアジサシが卵をブワーッと産み付けたんですね。で、240個くらい卵があって『こりゃすごい! あのコアジサシがこんなところに卵を産んでた』って言ってみんなで喜んでいたんですが、その年はコンクリートの上にただ卵を生んだだけだったので、ほとんどの卵が風で飛ばされて死んでしまって、結局5羽くらいしか巣立っていかなかったんですね。で、そのコアジサシたちがもっと住みやすい環境を作ろうということで、リトルターン・プロジェクトというNPOが起ち上がりまして、僕らは色々な作業のお手伝いをしたりとかボランティアをさせていただいています」

●あと、学生バードソンは吉田さんが関わっていらっしゃるプロジェクトですよね。これは6月13日にNEC学生バードソンが行なわれるわけなんですが、この学生バードソンというものについて簡単に説明していただけますか?
吉田さん「NEC学生バードソンというのは、バード・ウォッチングとマラソンを掛け合わせた造語なんですけど、3人1組のチームを作って事前に募金者を募って、その募金者にまとまった額で金額を募金してもらうか、またはバード・ウォッチングで見つけた鳥の数に応じて、例えば1羽見つけるごとに50円募金とかそういう形で約束をして、バード・ウォッチングを実際に行なって、その金額と見つけた鳥の種類などで競い合うっていう競技なんです」

●じゃあ、参加をする人達は色々な鳥を知らなくてはなりませんね。吉田さんは参加者の側から関わったんですか?
吉田さん「参加者のほうでも入っていますね」
赤瀬さん「で、運営側でもあります」
吉田さん「つまり、両方ですね」

●見つける鳥の数はどのくらいと決めているんですか?
吉田さん「とりあえず・・・、どれくらい・・・?(赤瀬さんを見る)目標は決めていないんですよね」
赤瀬さん「50種類くらいは見つけて欲しいな(笑)」
吉田さん「では、50種類を目指して頑張ります」

●では、来週終わったあとに結果を報告していただきたいと思います(笑)。それからFUN & FANというものがありますが・・・。
赤瀬さん「ファンファンといいます」

●あっ! &(アンド)が入らないんですね。なんかパンダの名前みたいですね(笑)。
赤瀬さん「(笑)。ファンファンというのはF.A.ネットワークの季刊誌なんですね。ですから、活動紹介ですとか『こんなことをしましたよ』という報告を、これまで年間、1回あたり600名くらいに発行して郵送をしていたんですが、実は2年ほど前に不況のあおりを受けてウェブ化されたんです」

●今はインターネットで気軽に見られますからね。
赤瀬さん「そうなんですよね。逆にインターネットにしたおかげで色々な人達にも見ていただけるようになりましたし、カラーで色々な写真を載せられるようにもなりました。逆に情報量も増えてよかったかなと思うところもありますね」

●自然環境を保護しようとすると、人との関わりも重要になってきたりもするんですね。
赤瀬さん「そうですね」
吉田さん「はい」

◎自然を保護しようと思ったら人との交渉が大切
●私が学生のころは環境保護や自然保護といった言葉が聞こえてこなかったんですが、今の学生さんで自然環境に興味を持っている人ってたくさんいるんですか?
吉田さん「結構周りにいるんですけど、活動の場があまりないうえに知る機会も少ないので、何をすればいいか分からないという人が僕の周りでも多いですね」

●じゃあ、そういう人達はF.A.ネットワークのホームページをちょっと覗いて、『これだ!』と思ったものがあればそれに参加すればいいんですね。
吉田さん「友達なんかはそういう(自然保護)活動をしているって聞くと、『じゃあ僕も参加してみようかな』って言ってくれる友達も多いですね」

●おふたりはF.A.ネットワークに参加して変わったことってありますか?
吉田さん「ボランティア活動なので自主的に動こうという姿勢が出て来ましたね」

●例えばどういうことに対してですか?
吉田さん「今まで自然保護関係で聞き流していたニュースや、自分が『参加できないな』って思ったことに関しても、積極的にやっていこうと思えるようになりました」

●今までだったらあきらめていたものも、1歩踏み出せるようになったんですね。
吉田さん「実際に活動してみて、割と環境問題が身近だということが分かりましね」

●赤瀬さんはどうですか?
赤瀬さん「もともとF.A.ネットワークに関わり始めたのが、自然に関わりたくてだったんですよ。中学、高校までワンダー・フォーゲル部で山を登っていたので。自然に関わりたくて入ったというのがもちろんだったんですが、僕らが相手をするのは自然そのものというよりも、例えば北海道だったら北海道の自然をバック・グラウンドに持っている行政の人だったり、施設の人だったり、NEC学生バードソンだったらお金を提供してくれるNECという企業を背負った人だったり、人と交渉するにはぶつかり合うこともありますし、お願いすることもあります。つき合いがすごく多くなったんですね。正直、最初はそれに面食らっていた部分もありますね。『もうちょっと自然見たかったんだけどなぁ』とは思うのですが(笑)、でも自分で山を歩いているときも『あっ、自然が壊れている』とかは見ることが出来るのですが、それを何とかしようと思ったら、その壊れた自然をバック・グラウンドに持っている別の人達に僕らが直接当たっていくなり、間接的にも当たっていくなりしないと結局、物事は解決しないんだなということがわかりましたね。僕らが行政の人達に『すみません。お願いします』って頭下げたりすることもありますし、そういうことをやっていく中でちょっと噛みしめているっていう形ですね。そこは驚きと発見という感じですね」

●ホームページでワークキャンプに参加された方達のコメントを読んだんですが、多くの人が「自分の気持ちや意見をハッキリと伝えることの大切さを知った気がする」と書き込んでいたんですよ。それを見てやっぱり人と人なんだなぁと思いました。おふたりは将来は社会人になって自然環境に関わる仕事に就きたいと考えていらっしゃるんですか?
吉田さん「仕事は研究職に就きたいと思っているので、例えばこういう自然保護活動とかはF.A.ネットワークの活動にOBとしてという感じになると思います」
赤瀬さん「直接自然保護に関わる道、例えば環境省とか野鳥の会のレンジャーさんというのを、以前に考えていたこともあったんですが、僕の場合はそれよりも自然の破壊されている状況や、あるいはそれを保護しているところを人に伝える仕事をしたいと思っていまして、できれば新聞の記者とかでそういうところを取材して廻れたらなぁって思っています」

●では「新聞記者・赤瀬悠甫」さんにいずれフリントストーンも取材したいと思います(笑)。6月13日のNEC学生バードソン、吉田さん頑張って下さい。今度は現地で取材したいなと思います。今日はどうもありがとうございました。

■ I N F O R M A T I O N ■
■F.A.Network情報
 大学生を中心とした自然保護のボランティア組織。会員制ではなく、組織が関わっている様々なプロジェクト(ワークキャンプやOB、OGが中心となった霧多布ツアー、谷津干潟の自然観察プログラム「ソロモンの指輪」やチャリティ・イベント「学生バードソン」など)に気軽に参加することができる。
・「NEC学生バードソン」
 絶滅危惧種の渡り鳥コアジサシの保護活動を進めるNPO「リトルターン・プロジェクト」を応援するための、バード・ウォッチングと募金活動を組み合わせたチャリティ・イベント。実際に野鳥を探す「チーム参加」と、応援するチームが見つけた野鳥1種の募金額を決めて、見つけた種類の数だけ募金する「募金参加」の2つの方法がある他、チームに関係なく、直接実行委員会に募金することも可能。尚、集まった募金はコアジサシ保護基金に寄付される。
開催日 6月13日(日)
開催場所 日本全国
問い合わせ F.A.Network(学生バードソン2004実行委員会)
 E-mail : birdathon@mail.goo.ne.jp
   FAX:03-3751-1145
F.A.NetworkのWEBSITE http://www005.upp.so-net.ne.jp/fan/index.htm
 

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