2004.07.18放送

海野義明さんと葉山・長者ケ崎の磯観察
=“なんですか”タカハシの夏休み・海編=


今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは海野義明さんです。


 子供向けの海の環境教育や海辺の自然体験活動指導者の養成なども行なっているネイチャー・ガイド「海野義明」さんを、活動の拠点である葉山に訪ね、「海野」さんの指導のもと、シーカヤックに乗って、近くの磯に上陸、潮だまりや海岸の植物などの観察を行ないました。

◎手乗りエビ発見!
海野義明さん。海と陸の生態系に詳しい優秀なネイチャー・ガイド。
海野さん
●オーシャン・ファミリー/葉山海洋自然体験センター代表の海野義明さん。だんだんと肩書きが長くなっていきますね(笑)。
海野さん「そうですね(笑)。色々なことをやっているので」

●ただ今、葉山の大浜海岸に来ているのですが、海野さんがいつもやっていらっしゃるネイチャー・プログラムを体験させていただこうと思いまして、今日は私だけではなくて、ウチの若手で“なんですかマン”というのがいまして(笑)、何にでも「なんでかな?」って質問好きの子がいるので一緒に教えていただきたいと思います。
海野さん「分かりました。何にでも興味を持てるというのはいいですね」

●カヤックがあるということは、これに乗ってどこかにいくんですか?
海野さん「そうです。あそこに見えるのが長者ケ崎という岬なんですけど、磯が広がっていますので海の生き物がたくさん見られるんです。カヤックで移動してあそこまで行ってみましょう」

●ウチの“なんですか”タカハシはカヤックも初挑戦なので、よろしくお願い致します。
始めてのシーカヤック。海野さんから漕ぎ方を教わる“なんですか”高橋(右)

    
★    ★    ★

海野さんの指導の甲斐あって、何とか無事に岬に辿り着くことが出来ました。しかし、タカハシの後ろで漕いでいた番組プロデューサーはビショビショになってしまっていました(苦笑)。


●無事にカヤックも漕げて、岬に到着しました。高橋良太です。
リョウタ「よろしくおねがいします」
海野さん「よく頑張って漕げました」

●ここの磯はどういう感じになっているんでしょうか?
海野さん「ここは砂地と石ですけど、もう少し先のほうに回り込むと潮だまり、タイド・プールがあります。そこでは色々な魚、ヤドカリ、カニが見られますから、行ってみましょう」

と、いうことで我々一行は、フナムシがたくさんいる海辺を歩き、日当たりのよい磯につきました。

●磯の観察を始めるわけなんですが、その前に海に来た時の注意事項や、磯遊びなどをする時の注意しなければいけない点について教えていただけますか?
海野さん「まず、海で一番危険なのは波ですから、気象天気予報や台風情報を聞いて、その海が安全かどうかという予想をたてて下さい。それから、天気がいい日に行くと思いますが、そういう日は暑くて気温が高いので熱射病、日射病に気を付けなきゃいけませんね。特に小さいお子さんと行く際には、水分が奪われて日射病、熱射病にならないように気を付けて、こまめに水分補給をして欲しいと思います」

●夢中で遊んでいると分からなくなってしまいますからね。
海野さん「ついついそうですね。あと、日焼けも大変ですから、日焼け止めや長袖を着るなりしてもらえればと思います。
 磯の生き物ですけど、中には危険な生き物もいるんですね。例えば、イモガイといって魚を矢で刺して殺して食べてしまうような貝がいるんです。これを人が持っていると刺されることもありますし、それからゴンズイとかカサゴの仲間には、背びれにトゲがあってそれで刺すものもいます。で、夏はヒョウモンダコといって、コバルトブルーの斑点がでるキレイな小さなタコがいるんですが、これも噛まれると毒があって危ないんですね」

●キレイなものには毒があるということですね(笑)。
海野さん「(笑)。気を付けなければいけません。よく知らない生きものには手を出さないほうがよいと思います。図鑑で調べて安全を確かめてから、あるいは磯や海に詳しい人に聞いてからのほうがいいと思いますし、やたらと触らずにそのままじっくりと見ていると、カニやエビも色々な行動を見せてくれますから。じっくり見るというのが楽しくていいのではないでしょうか」

●海野さんからお借りしたこの透明な箱はなんですか?
海野さん「これはハコメガネといいます。海面が太陽の反射で見づらいのですが、このハコメガネをあてると水の中の生き物が見えます。あそこに魚がいるみたいですよ。何か見えましたかー?」
リョウタ「小さい魚が見えました」
海野さん「海底で動いているのはアゴハゼといって、この辺りでは通称ダボハゼといいますけど、磯にたくさんいるハゼの仲間ですね」

●ダボハゼ?
海野さん「はい。アゴハゼとドロメというに種類のハゼをダボハゼといっています。こういう浅い磯場に多いはずです。あと、いかがですか? 動いている貝殻がありますね」
リョウタ「ヤドカリみたいなものがいます」
海野さん「そうです。ここにはヤドカリがたくさんいるんですよ。ヤドカリの爪の先を見て下さい。色がどうなっていますか?」
リョウタ「白くなっています」
ヤドカリ
海野さん「ヤドカリはヒゲの色と爪の先の色、あとハサミの形で種類がわかるんです。これは足の先が黒くて、ヒゲをよく見ると黒白のマダラ模様なんですが、ホンヤドカリという浅い磯場にいるヤドカリの仲間です。そろそろ繁殖の時季なので、大きなオスのヤドカリがメスのヤドカリを抱えて歩いている姿もあるかもしれません。見つけたら教えて下さーい」

●先ほど、ヤドカリ達がたくさん集まって宿の奪い合いをしていました。
海野さん「そうですね。気に入った貝殻があると奪い合って取り換えたり、新しい貝殻を見つけると『まず、入ってみよう』という気になるらしくて、ちょうどいい大きさの貝殻があると集まって奪い合いをしたりします」

●やっぱり、選ぶ基準として大きさが一番大事なんですか?
海野さん「そうですね。自分が入ってちょうどいい大きさの貝殻を選びます」

●それは、形が丸くても尖っていても?
海野さん「はい」

●あっ! 今、重なりましたね。
海野さん「これは取り合いをしようとしているんじゃないですか」

★    ★    ★
海野さん「あっ! ここにほら。見て下さい。何かいませんか?」
リョウタ「透明なエビみたいなものがいますが、これはなんですか?」
海野さん「これは黒い筋がハッキリしていますね。で、磯にいるのでイソスジエビというエビです。体が透明ですごくキレイですよね。手のひらを出してみて下さい。動かさないでいると手に乗ってきて触るでしょ?」
リョウタ「はい。触ってきました」
海野さん「手乗りエビになるんですね」
リョウタ「なぜ、このエビは手に寄ってくるんですか?」
海野さん「餌はタンパク質ですから、手がタンパク質の匂いがするからなんですね。それで触ったり、味見に来るんです。ヒゲの触覚に味を見る器官があるので、それで触ったりヒゲで味を見たりするんですね。触ってみて『おいしくなさそうだな』と思えば行ってしまいますし、『おいしそうだな』と思えばちょっとだけハサミでつまんだりします」
リョウタ「グルメなんですね(笑)」

◎タコが大根を盗む話の真相とは?
カニ(ヒライソガニ?)
海野さん「何かみつけましたか?」
リョウタ「カニが岩の下に潜っていきました」
海野さん「爪が見えていますね。もうちょっと静かにしていると姿を現してくるんですが、このカニは甲羅の背中が真っ平らなので、甲羅の平たい磯、ヒライソガニというカニです。ちょっとこの石をどけてみて下さい。今の仲間がいるかもしれません」

●カニのオスメスはどうやって見分けるんですか?
海野さん「カニをひっくり返すと、お腹の中に腹板という板があるのですが、これが細いのがオスです。広いのがメスです。いわゆるカニのふんどし、カニのスカートと呼ばれるものですね。メスが広いのはここに卵を抱えるからなんです。卵が孵化寸前までお腹の板の中で大事に育てて、大潮の時に一斉に卵から子供を孵すんですね。それで潮の流れに乗って海の中に広まるようになっているわけですね」

●リョウタ君、分かりましたか?
リョウタ「分かりました」

●次にカニを見つけたら、オスかメスかあなたがちゃんと判別するように!
リョウタ「はい!」

●いましたよー! 海野さんが捕まえてくれました! この子は男の子女の子どっちでしょうかー?
リョウタ「これは、オスですか?」
海野さん「そうです、オスですね。よく分かりましたね。ふんどしのほうですね」

●ピンポーン!

★    ★    ★
カニを探すのに夢中になり、石や貝殻を動かしたままのタカハシに海野さんからこんなお話がありました。

海野さん「石をどかしたりひっくり返したら、元に戻してあげておいてくださいね。石の裏側には日に当たったり表に出ると、他の生き物にすぐ食べられてしまう弱い生き物がいますから、ひっくり返したり見たら元に戻してあげて下さいね」
リョウタ「分かりました」
★    ★    ★
リョウタ「これは何ですか?」
海野さん「それは、一枚貝で巻貝の仲間なんですね。巻貝で、巻かずに平たく付いてしまう。アワビもそうですけど、巻貝の仲間でウノアシガイといいます。鵜という水鳥知ってます?」
リョウタ「はい」
海野さん「海鵜とか川鵜。あの水かきに似ているのでウノアシガイといいます」

●岩にピタッとくっついていますね。
海野さん「それぞれいる場所が決まっていて、夜とか餌を食べに歩くんですけど、また自分のくぼみに戻ってくるんです」

●それは覚えているんですか?
海野さん「覚えているんです。自分の辿った道に匂いがついて、その匂いを辿ってまた戻ってくるんです」
リョウタ「水で匂いが流されちゃったりはしないんですか?」
海野さん「粘膜がありまして、そのヌルヌルした粘膜が歩いたあとに足跡みたいについて、その匂いを辿って戻ります。
 ここに、砂がたくさんついた生き物がいます。触ってみて下さい」

●ざらざらしています。
リョウタ「やわらかいですね。閉じました」
海野さん「これはヨロイイソギンチャクといって、もう少し水がひいてくると空気中に出ちゃうんですけど、体が乾燥しないように体に砂利とか貝殻をつけるんです。乾燥に絶えて一番浅いところにいるイソギンチャクなんです」
リョウタ「この岩のところに、張り付いているのはなんですか?」
ヒザラガイ
海野さん「これは非常に古い貝の仲間で、ここに甲羅みたいにいくつか板がありますね。この貝をはがすとクルクルと丸まって膝みたいになるんです。膝みたいになるのでヒザラガイ という貝です。非常に古い貝です」

●この貝は普段から張り付いているんですか?
海野さん「そうです。いる場所が決まっています。そこが自分の定位置で、動いてもまたそこに戻ってきます」

●くぼみに限らず、岩の表面に何気に柄のようについています。
海野さん「ここに、先ほど見たウノアシガイと似ていて、模様の線が多い貝がいます。他の貝はほとんど水中でえら呼吸をするんですけど、これは空気中の酸素を肺呼吸で取り入れる貝なんです。水の中に入るとじっとしていて、空気中に出ると動き出す。ウノアシガイのほうは水中で餌をとり、こちらは菊の花みたいに見えるのでキクノハナガイといいます。これは陸上で餌をとります。住み分けをするんですね」

★    ★    ★
海野さん「あっ! キレイなのを見つけましたね」
リョウタ「これは何の貝殻なんですか?」
海野さん「これ、内側が虹色になっていますね。中身はタコに食べられちゃったみたいですけど、アワビの仲間でトコブシという貝です。これも先ほど見たウノアシガイや、ヒザラガイみたいに、岩にピッタリとくっついているんですけど、アワビもおいしいですよね?」
リョウタ「はい!」
海野さん「タコはとてもおいしいものが好きでですね、アワビやトコブシを食べてしまうんですね。で、キレイですから昨日の夜に食べられたやつじゃないでしょうか」
リョウタ「この貝にたくさん穴が空いているのはなぜですか?」
海野さん「あ、これはですね、他の生き物に襲われたときにピタッと岩につきますよね。で、息が出来ないので息をするために穴が空いているんです。身を守るためなんですね。で、タコは賢いのでこの穴を足で塞ぐんですね。それで、貝も苦しくなるから浮くんですね。その瞬間にペキッと剥がしてしまってムシャムシャ食べちゃうんですね」

●その昔、フリントストーンのプロデューサーが「タコが大根を盗む」という話をどこからともなく聞きつけてきたんですが、御存じですか?
海野さん「大根ですか。サツマイモを盗むというのは聞きますけどねぇ・・・(笑)」

●サツマイモですか ?
海野さん「ええ。それはおそらく、その地域で大根泥棒とかイモ泥棒がタコのせいにしたんじゃないかと思うんですね。信憑性があるのは、タコを釣るときは白い色の餌をつけるんです。その白い色でカニと間違えたり、おいしそうな貝だと思うせいか飛びつくんですね。ですから、ネギとか大根とかを針に付けて投げて、タコを飛びつかせて取るので、大根を食べるとか、イモを食べるとかってなったんじゃないですか」

●あっ、畑に上がって取るのではなくて・・・。
海野さん「それはまずないと思います。多分、濡れ衣を着せられたんじゃないですか」

●なるほどねぇ。

◎フナムシは半分ずつ脱皮!?
ムラサキウニ
海野さん「ここに面白い生き物がいます」

●キレイですね。ブローチにでも出来そうですね。
海野さん「このトゲだらけの生き物はウニです。トゲは紫色でムラサキウニといいます。このウニってどうやって歩くか知っていますか?」
リョウタ「分からないです」
海野さん「多くの人はトゲを使って進むと思っていらっしゃるんですけど、ちょっとひっくり返してみますね。そうすると、どうなるでしょう。よく見ていて下さい。トゲの間から何か出てきていませんか?」
リョウタ「なにか、触覚みたいなものが出てきました!」
海野さん「そうですね。これは管足(かんそく)といって、ゴムの長い風船に空気を入れるように、トゲの間から水を注入するとシューッと伸びてきて、その先に吸盤がついているんですね。この管足で歩くんです。これで岩とか貼り付けて動いていきます。で、ウニはお腹側が急所ですから、なるべく早く起き上がろうとして、今、だんだん起きてきましたね。で、グーッと体を起こしてお腹側を下にします」
リョウタ「(管足が)たくさんついているんですね」

★    ★    ★
●小さい子供達に多いと思うんですけど、楽しくて、「生き物達を捕まえたい!」と深追いしてしまいがちです。生き物の気持ちになるとそっと見ているのがいいですよね?
海野さん「そうですね。一番いいのは、捕まえたりせずにじっと見ること。捕まえると縮こまってしまうし、逃げ回ります。それよりも普段の生活を見るほうが、餌を食べたり、オスがメスを呼んだり、オス同士喧嘩をしたり、色々な行動が見れますから、じっと静かに見ているのが一番いいと思います」

●あと、せいぜい自分の手を水に入れて岩と同化させて、その上をどんな生き物達が通るか見ているとかね。
海野さん「そうですね。エビも寄ってきましたけども、ヤドカリも寄ってくるし、カニも寄ってくるし、中には肉食性の貝も来ますから、そうすると一生懸命手のひらを突いてきたりします。まぁ、肉食性といっても人を襲ってきたりはしませんけどね(笑)」

★    ★    ★
フナムシ
●海野さん、この辺結構フナムシが多いんですね。
海野さん「そうですね。最近、色々な海岸でフナムシが減っているんですけど、ここは環境が良いみたいでフナムシがたくさんいます。なんとなくゴキブリに似ているから嫌われ者なんですけど(笑)、海の色々な有機物を分解したりする大切な役割をしているんですね。フナムシが多いというのは健全な海の証拠ですね」

●これは、成長すると大きくなるんですか?
海野さん「そうです。カニと同じように脱皮して成長していくんですけど、フナムシの脱皮は面白くて一遍に脱がないんですね。体の半分ずつ脱皮していきます」

●縦半分ですか?
海野さん「頭の方と尻尾の方と上下にです」

●(笑うスタッフに向かって)「なんて質問してんのかい!」って?(笑)
海野さん「(笑)。というのは、一遍に脱皮して一変に体が柔らかいと歩けないんですよ。だから、いつでも半分は逃げられるように、半分ずつ脱皮をするんです。よく見ていると、半分は白くて脱皮寸前で、片方はとても黒くて新鮮な感じの脱皮したての色のフナムシもいると思います」

●均等に黒いということは?
海野さん「両方脱皮しているということですね」

◎海岸の葉っぱは肉厚
海岸に生える植物について説明を受ける。
●今までは磯の観察をしてきたんですが、色々な生き物がいました。見上げると青空にカモメが飛んでいたりして、ちょっと耳を傾けるとセミが鳴いていて、浜を見ると植物が涼しげな木陰を作ってくれています。
海野さん「植物や木があると涼しいですよね。植物は光合成をする時に、太陽のエネルギーを使ってしまうから涼しいんですね。都会のヒート・アイランドというのはその熱を使う植物がいないので、熱がいつまでもこもってしまって暑いんですね。だから、緑のあるところは涼しいんですね」

●今、私達は涼みに緑のそばへ寄ってきたわけですが、この辺の植物の特徴ってなんですか?
海野さん「海岸の植物は岩場に生えますから、水分が少なくて、直射日光を十分に受けますので、水分をいかに蓄えておくかというのが大事なポイントになります。ここにある、黄色い花が咲いた植物を触ってみて下さい。葉っぱが厚いですよね?」

●はい。厚いです。
海野さん「隣にある植物はもっと厚いと思います」

●あ、ホントだ。
ツルナ
海野さん「この黄色い花が咲いたほうの植物はツルナといいます。で、こちらの葉っぱが厚いほうがハマボッスという海岸植物なんです。よく、水分を蓄える植物っていうとサボテンが有名なんですけど、砂漠ほどではないんですが、水分を蓄えておくことが大事なので、海岸植物は葉っぱの肉が厚いものが多いんです」

★    ★    ★
海野さん「ここに葉っぱが丸まっている植物がありますよね?」

●葉っぱが内側に丸くなっているこの植物ですか?
海野さん「そうです。これは、ずっと乾燥して日が照っているので、葉っぱの裏から水分が蒸発しますから、あまり水分を蒸発させないように、葉っぱが丸まってきているんですね。ちょっと、臭いを嗅いでみて下さい。結構強い臭いがしますよね?」
リョウタ「あっ、青臭いですねぇ」
海野さん「そうなんです。植物が臭いを持つというのは、自分達が天敵に食べられないようにしているんですね。一番の天敵は昆虫なんです。だから、トゲが生えたり、毛が生えたり、臭いが強いというのは芋虫のような仲間に食べられないように強い臭いを持っています」

●この植物、実もあるんですけどなんていう植物なんですか?
トベラ
海野さん「これはトベラという植物です。この実も秋になるとパカッと割れて真っ赤な種が見えてきます。そうすると、メジロが冬を越すときの大切な餌になるんですね。ですから、冬になるとこういう木のところにメジロがたくさんきます。あ、ここに去年、種がついていた実の跡がありますね。4つにパッと割れます」

●まるで花のようになっていますね。
海野さん「そうですね。で、種の色は真っ赤なのでとてもおいしそうに見えますから、メジロは一生懸命食べて、そして飛んでいってフンをして、そこでフンの中に入っている種からまた芽が出て、このトベラはあちこちで増えることが出来るんですね」
リョウタ「潮風が植物に与える影響はないんですか?」
海野さん「海岸植物は潮風に強いんですが、塩というのは微量元素(ミネラル)を含んでいますから、植物にとってはいい栄養になるんです。ですから、お乳を出す量が多い牛がいる場所は島や半島の牧草地なんです。そこの牧草はいい栄養分を持っていますから、そういったところの牛はお乳の量がよかったり質がいいんですね。ですから、島などに行った時に牧場に行ってアイスクリームや牛乳が売っていたら是非、味わってみて下さい。本当においしいです」
リョウタ「はい。食べてみます」

◎ツヤツヤツルツルの貝の秘密!?
海野さん「海岸に下りると貝殻がたくさん落ちていますよね。貝殻も多様な種類がありますから、じゃあ、高橋さん。巻貝を5種類と二枚貝を5種類の合わせて10種類、探してみて下さい!」
リョウタ「はい、探します!」

〜数分後〜

高橋が集めてきた貝の説明をする海野さん。(海野さんが持っているのはフジツボ)
リョウタ「見つかりました!」
海野さん「あっ! 早いですねぇ。この辺は貝殻が多いから、たくさんの色々な種類を見つけられました。貝じゃないものもちょっといますね(笑)。これ、石灰で出来ていて貝殻と同じような感じですよね?」
リョウタ「はい」
海野さん「でも、これ実はエビやカニの仲間と同じで岩にくっついて、自分の周りを石灰で固めたんですね。これは、富士山みたいで真ん中に穴が空いて壺みたいに見えるのでフジツボといいます。裏を見て下さい。穴がたくさん空いているでしょ?」
リョウタ「はい。空いています」
海野さん「これ、蜂の巣みたいでしょ?」
リョウタ「はい」
海野さん「これをハニカム構造といって、非常に丈夫な作りなんです。人間の世界でもF1のボディはハニカム構造で作ってあります。もし、これに石がガーンって当たっても、一枚だったらパキッと割れて中身を天敵に襲われてしまうんですけど、ハニカム構造なのでゴスッゴスッと少し削れるくらいで済むんですね。軽くて丈夫にできている。だから、人間が考え出す前に生物はちゃんと作っていたんですね」
リョウタ「理にかなっているわけですね」
海野さん「これも貝殻みたいですけど、ちょっと違いますね。先ほど見ていただいたウニの殻です」
リョウタ「ウニの殻!?」
海野さん「トゲの中は石灰で体が覆われていて、イボイボがありますよね?」
リョウタ「はい」
海野さん「ここに、一本一本トゲが乗っかっているんです。で、その周りに筋肉がついていて動きます。で、空に透かすと穴が空いていますよね?」
リョウタ「あっ、細かく空いています」
海野さん「そうそう。この穴から、先ほどウニが歩くときに出た・・・」
リョウタ「管足が出てくるんですか?」
海野さん「あっ、よく覚えていますね。そうです。管足がこの穴から出るようになっています。あっ、これは面白いですねぇ。このウネウネとうねったやつ。これは、実は巻貝の仲間でヘビガイといいます。ヘビみたいでしょ?」
リョウタ「はい」
海野さん「巻貝は普通クルクルとねじれているんですけど、これが一旦ほどけて、その岩の形に合わせて、ねじれて巻いてしまうという巻貝の仲間です。普通、巻貝はカタツムリのように這って移動をするんですけど、 このヘビガイは岩にくっついて移動が出来ませんから、どうやって餌を食べるかというと、この穴から糸を出します。で、その出した糸に餌をくっつけて吸い取るんです。という、とても変わった巻貝なんです」
リョウタ「中に穴が空いているということは、貝自体が長いんですか?」
海野さん「そうです。長いです。巻貝もほどけばとても長いんですね」
リョウタ「あっ! そうなんですか!」
海野さん「長い筒状の巻貝が丸くなれば巻貝に、長く伸びればヘビガイになります。あっ、これがタカラガイです。タカラガイっていうのは、昔は貴重でお金の代わりにしていたのでタカラガイというんですね。キレイな模様ですよね?」
リョウタ「はい。内側に巻き込むようになっているのはなぜなんですか?」
海野さん「これが巻貝の昔の特徴で、中を他の生き物に襲われないようにしっかりと口の部分を閉じているんですね。ここから体が出てきます。他の貝は外が少しザラザラしていますよね。でも、タカラガイはツルツルなんですね。実は、タカラガイは海の中で生きているときにキレイな模様を出していません。外透膜といって膜に覆われているんですね。それは、岩そっくりの色をしているので、保護色で見つからないようになっているんですね。いつも外透膜で覆われているので、ツルツルツヤツヤのキレイな貝殻をしています。他の貝殻は外が出ているので、海草がついたりしてザラザラしているんですね。これは、先ほど見たトコブシですね。これも巻貝の仲間なんです」
リョウタ「あっ! これも巻貝なんですね!」
海野さん「はい。お尻の方が巻いているでしょ。で、一枚貝として完全に巻がなくなったのが、カサガイの仲間です。これは、線が松葉みたいに見えるのでマツバガイといいます。海の多様さを感じられるように、貝殻にもたくさんの種類がありますよね」

★    ★    ★
●1〜2時間で私達ほとんど動いていないのに、リョウタの手には持ちきれないくらいの貝殻だらけだし(笑)、カヌーも初体験したし、様々な生き物にも出会えました。オーシャン・ファミリー/葉山海洋自然体験センター。長いです(笑)。
海野さん「すみません(笑)。色々な意味を入れ過ぎてしまいました(笑)」

●簡単にして下さい!(笑) 分かり易いんですけどね。葉山の海洋の自然を体験するセンター。そのまんまですか?(笑)
海野さん「はい(笑)。オーシャン・ファミリーというのは家族として親から子へ、子から孫へ海の大切なことを引き継いでいけたらなという思いがありますし、海には色々マリン・スポーツもありますけど、海洋自然体験センターは、是非、生き物の観察とかシュノーケリングなどで生き物と触れ合って欲しい。そういった自然を体験して欲しいということで海洋自然体験センターという名前にしました。大人から子供まで色々な人に楽しんでいただきたいなと思っています」

●また、夏だけに限らず一年中楽しんでいただきたいですね。
海野さん「冬でも一年中ですね。冬は海の中に入るのは寒いですが、逆に季節風で色々なものが打ち上がりますから、漂着物を観察したり、ビーチ・コーミングをしてビーチ・クラフトを作ったり、冬には海草がとてもよく伸びてきますから、その海藻を拾って海藻押し葉作りをしたりと色々な楽しみがあります」

●各シーズンごとの違った楽しみがあるんですね。海野さんの拠点は今後も葉山なんですか?
海野さん「そうですね。4年前の三宅島噴火で避難してきましたけども、その間『どこで過ごそうかな』ということを考えていました。で、自分が生まれ育った葉山の海はよく知っていますので、ここでもう一度再スタートを切りまして、都会からも日帰りで十分これますから、そういった意味では三宅島よりも多くの人が来てくれていますので、ここを拠点に動いています」

●この夏休みは是非、葉山にいらして海野さんと一緒に楽しい磯遊び等々を楽しんでいただければと思います。リョウタ君はまた違うシーズンに来て、今回の復習も兼ねて次回はどんなものが見つかるか楽しみですね。
リョウタ「また、色々質問させて下さい」
海野さん「どうぞどうぞ」
エイミー&リョウタ「今日はどうもありがとうございました」

海野さんは学校の先生のように穏やかに、とても優しく色々なことを教えて下さいました。また、帰りは私、タカハシは海野さんと一緒のカヌーに乗せていただいたのですが、とても力強くて早い、海野さんの漕ぎっぷりには驚き、感動しました。海野さん、サポートをして下さったライフガードの今村さん、どうもありがとうございました。

■ I N F O R M A T I O N ■
■ネイチャー・ガイド「海野義明」さん情報

◎「オーシャンファミリー/葉山海洋自然体験センター」
 「海野」さんが代表を務める同センターでは葉山を拠点に、海と自然の素晴らしさを伝える為の様々なプログラムを実施中。大人向けや指導者養成の為のプログラムなどもあるのでぜひ参加して下さい。尚、近々行なわれるプログラムは下記の通り。
・7月27日(火)〜29日(木):「葉山マリンキッズ夏休みスペシャル」(小学生対象)
・7月31日(土)と8月1日(日):「スノーケリング&フィッシュ・ウォッチング」(どなたでも参加可)
問い合わせ:オーシャンファミリー/葉山海洋自然体験センター
TEL:046-876-2287
オーシャンファミリーのウェブサイト:http://www5.ocn.ne.jp/%7Eocean-f/

◎「下田の海を楽しむ〜海辺の自然学校」
貝殻アート
 「海野」さんが指導者として関わっているネイチャー・スクール「海辺の自然学校」の下田編。海の生きもの観察やビーチコーミング、海藻押し葉など色々な角度から下田の海を体験。
開催日時:7月23日(金)〜25日(日)の2泊3日。
開催場所:静岡県下田市田牛海岸
対象:小学5・6年生
定員:40名
参加費:3万円(現地までの交通費は別途)
問い合わせ/申し込み:オーシャンファミリー葉山海洋自然体験センター
TEL:046-876-2287

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