2005年3月6日

チャリダー・石田ゆうすけさんのなんでも世界一

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは石田ゆうすけさんです。
石田ゆうすけさん

 7年半かけて自転車で世界9万5千キロを放浪したチャリダー「石田ゆうすけ」さんをお迎えし、放浪中に出会った景色や人々、感じたことなど個人的な世界一体験についてうかがいます。

世界一危険なトイレとブタの味!?

●半年ぶりですね。前回、番組に出ていただいたのが「行かずに死ねるか!世界9万5000キロ自転車ひとり旅」という本を出したときだったんですが、この度、その続編「いちばん危険なトイレといちばんの星空〜世界9万5000キロ・自転車ひとり旅II」という本が発売になりました。内容は7年半の旅で出会った色々な世界一を綴ったものなんですが、なぜ、タイトルが危険なトイレと星空になったんですか?

「ふざけたタイトルですよね(笑)。このタイトルは僕が考えたんですが、何にしようかなと考えたときに、いちばん危険なトイレというのは章としては本の中あるんですけど、タイトルですからインパクトがあったほうがいいので、いちばん危険なトイレといったら興味をすごく惹かれるかなと。でも、もしいちばん危険なトイレだけだとしたら、誤解されるじゃないですか(笑)。なので、一番上にあるものと一番下にあるものということで、星空とトイレになったんです」

●なるほどね。両極端ですもんね。

「そうですね。上と下と、キレイなところから汚いところまで(笑)」

●(笑)。世界一をまとめて本にしようと思ったキッカケってなんだったんですか?

「今、あちこちで講演させてもらっているんですけど、よく質疑応答なんかで、まず聞かれるのが決まっていて、一番よかったところはどこだとか、飯がいちばんうまかったところはどこだとか、いちばん美女が多かったところはどこだとか。世界中をグルッと廻った人に聞くことといったら、世界一はどこかということなんですね。やはり僕も、世界一周をしてきたけれども、他に世界を廻ってきたというやつがいたら、最初に聞くのはどこがよかったかなんですよね。だったら、それをそのまま前面に出してエッセイを綴れば、みんなに興味をもたれるものができるんじゃないかなと思ったんですね」

●色々な世界一ということで、タイトルにある危険なトイレというのはどこなんですか?

「これは、ブルキナファソというアフリカの国のトイレなんですけど、食堂のおばさんにトイレの場所を聞いて行ったところが、穴も何もない普通の小屋だったんですね。で、わけがわからなかったんですが、とりあえず地面の上で普通にことを始めたら、小屋の外側から大きな足音が聞こえてきて、でっかいブタが出てきたんですよ(笑)。
 実は、ブタ・トイレって結構あって、中国なんかにも時々あるんですね。でも、それはちゃんと排泄溝とかもあって、そこの下でブタが構えてるっていう感じなんですよ。だから危険ではないんですね。
 でも、そこは自分と同じ高さにブタがいて、またそのブタが日本のかわいいブタとは違って、イノシシみたいな感じで口からでっかい牙がニョキッと出ていて、よだれを垂らして目がギラッと光っていて、すごく飢えているんですよ(笑)。で、こっちは最中なんだけど、ブタは食う気満々で小屋の中に入ってこようとするんですよ。そのまま侵入を許したら、自分が出したてのそれを食べるだけならいいけども、そのまま自分のお尻とかなめて、さらにあの牙でお尻をかぶりつきに来るんじゃないかとか思い始めると、本当に怖くなって地面にあった石とかを投げながらことを続けましたね(笑)。
 石を投げると一旦、引き下がるんですけど、しばらくするとまたドドドドドッと小屋の中に入ってこようとするので、攻防がしばらく続いて、で、なんとかことをやり終えたので、パンツを履いてバッと小屋から出たら、同時にブタが入ってきて僕の分身をガーッと食べ始めて(笑)、見ながら膝が震えてしまったということがありましたね」

●危険ですね!

「怖かったですね」

●せめて終わるまで待っててくれよって感じですよね(笑)。

「ホントそうですね(笑)。ただ、やっぱりブタの食欲ってすごいですね。その小屋には何もなかったんですよね」

●じゃあ、世界一危険なトイレではあるけども、トイレとしては・・・。

「非常にキレイな、清潔なトイレでした。臭いさえなかったですからね」

●でも私、それ以上にその話にまつわる出来事で、世界一グロテスクだと思ったのが、その地域は珍しくブタを食べる地域だったんですよね?

「そうですね(笑)。本当はその国ってイスラム教がメインなんですけど、そこの国はゆるいんでしょうね。ブタを食べてました。西アフリカって一帯がイスラム教が強いので、ブタは食べてなかったんですけど、そこで久しぶりにブタの串焼きがあったので、嬉しくなって食べたらそういう味がして・・・(笑)」

●(笑)。お肉系っていうのは食べるものによって香りや味が変わるっていいますもんね。

「臭いが染みついていましたね(笑)」

●今日、夕食でブタ料理を食べた方はごめんなさい(笑)。

星の輝きは希望の輝き!!

●続いてタイトルにある、いちばんキレイな星空というのはどこなんですか?

「これは南米のアンデスなんですけど、標高が4000mくらいで高いので、ちりとかがなくて空気が澄んでいるので、それだけでも星がキレイなんですけど、その時の自分の心境が、この話にも関わっているんですけど、強盗に襲われた後だったんですよね」

●第1作の「行かずに死ねるか!」でも語られていましたけど、身ぐるみをはがされて銃を突きつけられたんですよね。

「そうなんです。やはりトラウマが残っていて、旅は現地で物とかを買って、なんとか再出発をしたんですけど、旅をしていても怖いんですよね。ペルー人に対してすごく恐怖心を覚えて、前方に建物とかが見えてきたら、物陰で拳銃をもって構えているやつがいるんじゃないかとかね。そういうことを考えながら走っていて、ちょっとつらい旅が続いていたんですね。
 その時は、野宿をする場所がなかったんですよ。4000mまで行くと、どこもかしこも木とかがないので隠れる場所がないんですね。でも野宿するのも怖かったので、たまたま現れた民家に行ったら、すごくやさしく迎え入れてくれて、飯とかも出してくれたんです。大家族ですごく貧しい生活しているのにも関わらず、いきなりやってきた僕にどんどん飯を出してくれて。
 で、彼らの笑顔とかを見ていると、それまで『ペルー人って怖い』って思っていたのが、偏った見方だったっていうのと、やっぱり人間は一緒なんだなって思いましたね。日本人以上に人と人が助け合って生きているなという印象を受けて、その時に心が解放される感覚があったんですね。夜中にトイレに起きて外に出たら、顔中に突き刺さりそうなくらいに星がバーッと降ってくる感じがあって、それがその時の自分の心境と星の感じがシンクロして、とても印象に残ったのが、僕にとっての世界一の星空だったんです」

●ある意味、世界一の旅の再スタートがきれたんですね。

「そういう感じはありましたね。星の輝きが希望の輝きに見えたといったらキレイすぎますけども(笑)、解放される感じがありましたね」

●その他にも様々な世界一が書いてあるんですが、テーマとしてホスピタリティというものがありますね。

「人の優しさなんて比べようがないですけどね。これはよく『どこの国の人がいちばん優しかったか?』って聞かれるんですよ。だから、自分の中で印象に残っているエピソードをいくつか挙げていますけど、意外とアメリカの田舎のほうは人が優しかったですね。しょっちゅう止められましたね。
 本にも出ているスーおばさんという人がいるんですけど、走っていたら向こうから車が来て、僕を抜かしたあとすぐにUターンしてきて、何も聞かずに『ウチに泊まれ』って言ってきて、家に行ったら1人で住んでいるんですよ。日本だったら女性1人で住んでいて、そういうのはちょっとないですよね」

●ましてや、自転車に乗っていて臭いであろう風貌で(笑)、どこの誰かもわからない人を泊めないですよね。

「しかも、向こうからしたら(僕は)外人ですからね。で、本人は日本語を話せるわけではないですし。日本で、英語を話せない人が外人さんを迎え入れるかといったら、そんな人なかなかいないですよね」

●ただ車で通りかかっただけですからね。

「わざわざ呼び止めてくれて。頼んだわけでもないですからね。それで行ったら、これまでにもたくさん人を招いているみたいで、すごくオープンな人なんですよね。日本を旅したときも色々な人に招かれたりしたんですけど、そういう時とホスピタリティが違うっていうか、物凄く自然体で、こっちが全く気を使わないで済むんですよ。その家に自分がいるのが当たり前みたいな感じがあって、そのおばさんの家は鍵もないんですよ。『怖くないですか?』って聞いたら、『こっちがいい人で接すれば、悪い人はいないわよ』って言ったんですよ。理想論かもしれないけど、おばさんの口からそれを聞いたときに、『そうだよなぁ』って思わされるくらい説得力があって、その言葉がずっと残っていますね」

マンネリは旅の天敵!?

石田ゆうすけさん

●改めて旅で感じたことを本にするというのは、また旅を思い出すいい機会になったんじゃないですか?

「そうですね。ものを書いているときって、入り込みますからね。だから、グッタリ疲れるんですけどね(笑)。アンデス山脈を越えているときの描写をすると、自分も高山病を思いだして息が苦しくなってくるんですよね。そんな感じでドップリ入ってしまって疲れはしますけど、もう1回世界一周した気分になりますね。
 書いていてよかったなって思うのが、旅を普通に漫然としているだけじゃ、やったということしか残らないんですよね。ひとつひとつの思い出とか印象深いエピソードなんかを文字にして形にしていくと、深められていく感じがあって、自分にとって自分がやったことを書くっていうのは、今回も書いていて有意義だなって改めて思いましたね」

●旅をする時は、小さなメモでも文字に残すっていうのはオススメですか?

「オススメですね。やるべきじゃないかっていうくらい強く思いますね。旅って最初のうちはすごく新鮮で色々なことが刻み込まれるんですけど、長くなってくると、ただ移動していくだけの時間も長くなってくるんですよね。そういう時に、書くということで意識が明確化するっていう感じはありますね」

●本の中でも旅のマンネリ化に関する話が書かれているんですが、世界を一気に一周するのと、何回かに分けて旅をして結果的に世界一周というのと、違いはなんですか?

「本人が何を求めるかにもよると思いますけど、僕が思うのは、旅の質を求めるならばせいぜい半年くらいに区切るかしないと、マンネリ化って旅の一番の天敵なんですよね」

●でも、世界中を廻ると色々な地域や文化がありますよね。それでもマンネリ化しちゃうんですか?

「ええ。確かに世界が変わると新鮮にはなるんですけど、旅っていう生活がひとつの日常になってしまうんでしょうね」

世界一周は人生の凝縮!

●今の石田さんにとって、世界一周をしての一番の思い出ってなんですか?

「やっぱり強盗に襲われたことですね(笑)。あれに勝るものはないです。一番の思い出って難しいですねぇ」

●様々な一番の中での一番ですからね。

「うーん。あ、アフリカですね。それは1作目にも書いているんですけど、その時はちょうど体調が悪くて熱が出て、原因不明の下痢もずっと続いていたんですよ。だけど、村がないところで、ずっとサバンナが続くところだったので休めなかったんですよね。だから、フラフラだったけどずっと漕ぎ続けていて、暑くて頭がもうろうとしていたんです。
 その時に、斜め前方くらいに真っ青なものが広がっていて、海かなと思ったんですけど、そこは内陸部だったので海なんかあるわけないんですよ。『なんだろうなぁ』ともうろうとした頭で見つめていたら、それが森だったんですよ。大気の底に森が沈み込んでいるように見えて、真っ青に染まっていたんです。
 で、その時にエンヤを聴いていたんですよ。また、エンヤがアフリカの大自然と合うんですよね。で、青い森が音もなく流れていって、耳にはエンヤの荘厳なミュージックがかかっていて、それがピッタリ同調しあっていたんです。その時に感じたのって『うわぁ、生きてるー!』っていうすごい力で、それがガーッと体の中から込み上げてきて、あまりに感動が強すぎて涙どころか小便漏らしそうになったんですよね(笑)。汚い話ですけど(笑)」

●せっかくの感動話だったのに・・・(笑)。

「(笑)。歯止めが効かなかったっていうか。あれが旅のひとつの頂点でしたね。あの感触を味わうためにここまで走ってきたっていうくらいの集大成でしたね。先ほどの話にも繋がりますけど、自分にとってマンネリ化すると分かっていながら、なぜ、一気に旅をしたかというと、それだけ一気に廻ることによって、何か見えるものがあるんじゃないかという思いがあったからなんですよ。例えば、こまめに日本に帰りながら小刻みに世界一周していたら、自分にとって単なる旅行に過ぎなかったかなっていう感じがあって、一周することによって人生の凝縮したものを味わうことができるんじゃないかって思ったんです。それをやってみたときに初めて、あの時の震える感動っていうのが、味わえたのかなっていう気がしますね」

●「チャリライター」の石田さん、次の本のご予定とかはあるんですか?

「今、日本農業新聞というところで、『世界食紀行』っていう食べ物の話を切り口にした話を書いているんですね。それも毎日書いているんですよ(笑)。だから、すごく大変なんですけど、毎日書いているだけあって量はあるので、それをもし、まとめることができたらというふうに思っています」

●楽しみにしております。今日はどうもありがとうございました。

■このほかの石田ゆうすけさんのインタビューもご覧ください。

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■チャリダー「石田ゆうすけ」さん情報

いちばん危険なトイレといちばんの星空

・『いちばん危険なトイレといちばんの星空〜世界9万5000km自転車ひとり旅II
実業之日本社/定価1,575円
 およそ7年半かけた自転車での世界の旅を通して出会った人や景色、食事やトイレなど、様々な角度から「石田」さんが選んだ個人的な“世界一”を綴った本。
 

・『行かずに死ねるか!〜世界9万5000km自転車ひとり旅
実業之日本社/定価1,575円
 1995年7月からおよそ7年半かけて自転車で世界を旅した模様をまとめた本。強盗に襲われたり、マラリアで苦しんだりしながらも、世界中で素晴らしい出会いを経験した「石田」さんの涙と笑いのエピソード満載!
 

・「石田ゆうすけ」さんのホームページ
 本の紹介や旅の概要、近況報告などが掲載されている。「石田」さんは講演活動も行なっており、講演依頼はホームページからでも受け付けている。
  HP:http://www2.ocn.ne.jp/~yusuke1/index.html

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. WHAT'S NUMBER ONE? / BOZ SCAGGS

M2. PIGGIES / THE BEATLES

M3. HOW DO YOU DO ! / ROXETTE

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. ADD SOME MUSIC TO YOUR DAY / THE BEACH BOYS

油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M5. SOMEWHERE IN THE WORLD / SWING OUT SISTER

M6. 旅の途中 / スピッツ

M7. CHINA ROSES / ENYA

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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