2006年8月20日

「天然生活」の編集長・小林孝延さんと暮らしを考える

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは小林孝延さんです。
小林孝延さん

 食と住まいをテーマに、シンプルな暮らしを提案する月刊誌「天然生活」の編集長、小林孝延(こばやし・たかのぶ)さんをゲストに、小さなこだわりを持ちたい全ての女性に送るナチュラルな暮らしのヒントや、最新号の特集のことなどうかがいます。

「天然生活」創刊のキッカケは油井昌由樹さん!?

●前回、番組に出ていただいてから14年になるので本当にお久しぶりです。現在、小林さんは「天然生活」の編集長ということでお聞きしますが、天然生活の創刊はいつなんですか?

「1冊目を作ったのが2003年の秋、10月です」

●約3年経つんですね。

「そうですね」

●そもそも「天然生活」というタイトルの本を作ろうと思ったときの方針やテーマってなんだったんですか?

「その本を出すまで、いくつか雑誌を手がけていたんですけど、『OUTDOOR』という雑誌のやっていたことは、アウトドア・スポーツを通して自然や地球との付き合い方を提案するというようなことで、その後『丸太小屋で暮らす』っていう本を作っていたときは、自然と共生する住居ということで、地球や自然との関わりを提案して、釣りの雑誌を作ったときには水とか魚を通して、といった感じで色々やっているときに、もっと幅広くいろいろな人の生活に根ざしたところで、考えてもらえるような本を作りたいなということで、そういう地球とか環境といったテーマを考えてもらえるような本を作りたいなと思っていたんですね。それをずっと考えていたら、もしかしたらそれって、生活の一番近いところにいる女性をターゲットにした雑誌の方が思いが届きやすいんじゃないかなって思ったのがキッカケです」

●小耳に挟んだところによると、この番組のコラムをやっていただいている夕陽評論家の油井昌由樹さんも関係しているそうですね。

「油井さんにはずいぶん昔からかわいがっていただいているんですけど、新しい雑誌を作る段階でイマイチ決定打が出なくて悶々としているときに、油井さんの事務所に遊びに行って『新しい雑誌を作りたいんだけど、どういう本がいいですかね?』って雑談をしたんですよ。そしたら、油井さんが『小林、今はなぁ、本に情報をいっぱい入れたからって買ってもらえるわけじゃないんだよ。本を手にしたときに、その本の重さを感じて“この本はいい本だなぁ”って思ってもらえるような本を作らないと売れないよ』という風にポロッと言ってくれたんですね。それが自分の中では目からウロコが落ちるようなヒントになって、『そっか。無理して情報を詰め込まなくてもいいのかなぁ。だったら、この本を手にして写真を眺めたり文章を読んだり、感じたりしてくれて“いい本だな”って思ってくれればそれでもいいのかな』って思えたんです。情報量にこだわらないで、1ページをできるだけゆっくり眺めていられるような本を作ろうと思ったんですね」

●「天然生活」のキャッチ・コピーが「小さなこだわり、小さな暮らし」だそうですが、これについて詳しく説明していただけますか?

「このコピーに込められている気持ちっていうのは、日常生活の中で地球とか環境って言うと、すごく堅苦しいし、これまでエコロジーとかって謳うと、それは正論かもしれないんですけど、どうしても一部のそういうことに対して原理主義的になっている人たちの、どんなところも細かい部分まで突き詰めて生活しなければいけないって感じになっちゃって、普通の人がちょっと興味を持っても、入り込めないようなところってすごくあったと思うんですよね。そうではなくて、例えば、物を買うときに使い捨てのものではなくて、長くずっと使えるものを買おうとか、ちょっとした選択をするときに小さいこだわりを持って選んでくれるだけでもいいんですね。しかも、ずっとそうじゃなくてもいいんですよ。暮らしの中にほんの1つ2つ入れると、しいてはそういうことが長く続いてきて蓄積されると、もっと大きなものになっていくんだよっていうことを伝えたいなと思ったんですね」

●それに対する読者からのリアクションっていうのはどうですか?

「共感してくれている方が多くて、『こういう雑誌を待っていました』っていう声も多くて、2003年の秋に本を出したときに僕らの想像を超えるくらいたくさん届いて、ありがたいことに3日間ですぐに完売してしまったんですね。それですぐ重版で、雑誌では珍しいんですけど、4回重版しました。そのときに自分の中では『受け入れられたのかなぁ』という確信が持てたんです」

●天然の生活っていうのはみんなが欲していたものだったのかもしれませんね。

「そうですね。ちょうどそういうタイミングだったのかもしれないですね」

ヨーロッパでは古いものを誇りにする

小林孝延さん

●「天然生活」の発売日が毎月は20日ということで、まさに今日、10月号が発売されたわけなんですけど、表紙がおいしそうなクッキー。「食欲の秋に突入するぞ!」っていう感じなんですが(笑)、最初の方にはおいしいクッキーの作り方が載っています。

「必ず雑誌の巻頭の方で1つ、料理だったりお菓子だったり、毎回、季節に合わせたものを紹介しているんですけど、もちろんお店に行けばおいしいお菓子がたくさん売っていますし、色々なものが手に入りますけど、例えば、月に1回でもいいですし、何ヶ月に1回でもいいんですけど、自分でクッキーを焼いてみるとか、ケーキを焼いてみるとか、例えば、子供と一緒にそういうことをすると、暮らしが素敵になると思うんですね」

●すごくナチュラルでスマートな暮らし方の提案でいて、それがエコに繋がっているっていう素敵なスタンスですよね。内容も気張らずにおしゃれにエコができるなって思うようなことがたくさん書かれていたり、応用も利くようなアイディアが満載っていうのが、私のこの雑誌の見方だったりするんですけど、そんな10月号では小林さん、パンダに会いに行って来たそうですね? これもこの雑誌の特徴なんですか?

「そうですね。この雑誌の中でスロー・トラベルっていう連載企画をやっていて、これは日本だけではなくて、世界各地に伝統的に伝わっている料理だったり、例えばフランスでずっと長く作られている鍋の工場の取材だったり、昔の器を復元して作っているポッタリーの取材だったり、そういうところに訪ねていくような連載企画ですね。モデルで今、すごく人気がある雅姫(まさき)さんという方にナビゲーターで毎回登場していただいているんですけど、彼女と一緒に色々なところへ訪ねて、昔ながらの暮らしの良さみたいなものを伝えたいなと思いながらやっています」

●パンダはどうでしたか?(笑)

「パンダは、会いに行くまでが遠かったですね(笑)。中国でも四川省のチベットに近い方だったので、車で延々ガタガタ道を四輪駆動車で走っていくような感じで往復八時間かかって、そのほかに上海から2時間半かけて成都っていうところまで行って、そこからまた車で行ってって、すごく遠かったですね」

●本当の意味でのスロー・トラベルだったんですね(笑)。

「そうですね(笑)。それで、園の中に入ったらそこには五十数頭保護されているパンダがいるんですけど、もう普通に、ありがたみがないくらいパンダがゴロゴロ歩いているんですよ」

●詳しくは雑誌を見ていただきたいと思いますが、この「スロー・トラベル」を通して、編集長である小林さん自身が創刊してこの3年の間に変わってきたところってありますか?

「この本を最初に創刊するときもそういうことを感じてもらいたいなと思って出したんですけど、例えば、ヨーロッパなんかに行くと、新しいものではなくて、古いことを自慢したり、誇りにしている人たちが多いんですね。『おばあちゃんの代から使っている鍋があるんだよ』とか、『このテーブルはもう何代も前から家にあるんだよ』という感じで。日本だと、どうしても最新のものを自慢するような文化じゃないですか。それが180度違うんだなと。家でもインテリアでも古いことを誇りにしている。そういうのがごく普通の人たちの感覚としてあるっていうのはすごいことだなぁと思いましたね。だから、自分の暮らしの中でもそういうようなことを自分の子供に伝えていけたらすごくいいなと思いますね」

●スロー・トラベルをずっと読みながら、旅の仕方っていうのも、もしかしたら変わるのかなっていう気もするし、日本人としての日本の文化っていうのを見直す機会にもなるかなぁと思いました。

「そうですね。色々な観光地や名所に行くのも楽しいですけど、是非、色々なところを旅行したらその土地だけにあるお祭りだとか、昔から続いている祭りだったりとか、そういう文化があるんですよね。そういうものに触れてもらったりすると、面白いんじゃないかなと思いますね」

地球を変えていくのは女性

小林孝延さん

●小林さん自身、こういう雑誌に関わっていくと、自らの生活も変わられたんじゃないですか?

「どうでしょう、部分的には(笑)」

●ま、男性ですからね(笑)。この雑誌はあくまで女性の視点だったりしますからね。

「でも、僕は昔から料理が好きだったりとか、学生の頃からキャンプにいって天然酵母のパンとか焼いたりしていたんですよ。でも、家事はご多分に漏れず奥さんに長いこと任せっきりだったんですけど、今は子供ができて、休日とかはキッチンに立って、例えばこの間も釣りに行って、サバをいっぱい釣ってきたんですけど、それをしめさばにしたり、竜田揚げにしたりしたんですよ。子供たちは喜んでいるかどうか分かりませんけどね(笑)」

●パパとしては自己満足とはいえ・・・(笑)。

「かなり自己満足かもしれない(笑)」

●(笑)。「天然生活」は基本的には若いお母さんを中心に読まれているんですよね。

「そうですね。中心は小さなお子さんを持つ20代後半から30代前半の女性が一番メインのターゲットなんですけど、僕らの誤算で、嬉しいことに実はもっと若い20代前半の独身の女の子だったり、逆にもう子供の手が離れてしまったお母さんのお母さん世代にも読まれているんですよね。それで、読者の方からいただいたハガキを見ていると、『母が買ってきたのを一緒に読みました』とかっていうのが結構ありますね」

●女性たちが好むものも変わってきているなって思うんですが、小林さんからご覧になって、紙面で取り上げているものや皆さんが記事に載せてくるものって変わってきていますか?

「他の雑誌はどうか分からないんですけど、ウチの雑誌は女性誌ではあるんですが、今をときめくようなブランド品が並んでいたり、ファッションでもモードのファッションをずっと追いかけているわけではなくて、基本的には定番モノというか、何年も着られるもの、10年ずっと履いていられるサンダルだったり、それって物を作って売る側からしたらどうなんだろうっていう感じもするんですけど(笑)、ずっと変わらないもの、セーターだったらこれが1枚あったら、もう大丈夫というような究極の選択というか、そういうものをチョイスして載せているんですけど、そういう物の良さを分かってくれる方が増えたというのは間違いないですね」

●これから先はどうでしょうか?

「男の人って自分がやってきたこととかやり方に対して、とてもこだわりが強いんですよ。で、それを変えることに対してすごく抵抗があるんですね。でも、女の人っていい意味でものすごく順応性が高くて、スタイルを変えることに対して合意的な理由があれば、どんどん変えられるのが女性だと思うんですよ。例えば環境にいいことっていうのは、ひいて言えば自分の子供の将来に対して、とてもいいことじゃないですか。そこに、おそらく子供たちを守ろうという母親の気持ちがあるんだろうと思うんですけど、そういうものをエコロジーな暮らしぶりに何かを変えていかなきゃいけないというときに、男の人みたいに余計な屁理屈とかを言わずに、素直に受け入れていくのが女性だと思うんですよね。そういう方がどんどん増えていくと、いろいろな意味でエコを取り巻く環境がどんどん変わっていくような気がするんですね。だから、地球を変えていくのは女性なんだなと思いますね」

「天然生活」と共にゆっくりと幸せな時間を

●今日20日、「天然生活」の10月号が発売されたばかりではあるのですが、この先へ向けての野望を編集長から聞かせていただけますか?

「この本を読んでくれて、自分の暮らしに少しでもヒントや何かを取り入れる人が増えてくれるのは嬉しいですし、忙しい1日が終わったあとに子供を寝かせて、この本をテーブルに置いて、自分のためにお茶を入れて、ゆっくり眺めて『あぁ、幸せだなぁ』って感じてくれるとすごく嬉しいなと思いますね。そんな本作りをこれからもずっと細々と続けていけるといいなと思いますね(笑)」

●(笑)。天然生活のキャッチ・コピーが「小さなこだわり、小さな暮らし」ということで、是非、そんな時間を自分のために持つことを1日の小さなこだわりにして、これからも「天然生活」を読んでいただければと思います。また、楽しい旅のエピソードなどありましたら、是非、番組で聞かせてくださいね。

「14年後にならないように頑張ります(笑)」

●そうですね(笑)。もっと早いうちにお話をうかがえればと思います。今日はどうもありがとうございました。


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小林孝延さん

■月刊誌『天然生活』10月号 絶賛発売中!

地球丸/定価590円
 「小さなこだわり 小さな暮らし」がキャッチコピーの月刊誌『天然生活』は毎月20日発売。最新の10月号では『おいしいクッキーのつくり方』がカラー写真付きで載っているほか、特集は、お子さんが生まれて3人家族になったフード・コーディネイター「根本きこ」さんの実体験が淡々と綴られている『私サイズの暮らし方』。
 また、『スロートラベル』のページでは、雅姫さんと愛娘のゆららちゃんが中国で可愛いパンダたちと対面。また、編集部が中国で買ってきた「おみやげ雑貨」のプレゼントもあるので、ぜひご覧下さい。

天然生活(地球丸)のHP:http://www.chikyumaru.co.jp/ten.html

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. THE SLOW LIFE / CHRIS PIERCE

M2. THE 3R'S / JACK JOHNSON

M3. 100YEARS / FIVE FOR FIGHTING

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. TRUE COLORS / PHIL COLLINS

油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

M5. DAUGHTERS / JOHN MAYER

M6. WOMAN / JOHN LENNON

M7. WHERE WE GONNA GO FROM HERE / MAT KEARNEY

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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