2008年7月27日

南極越冬を経験された
モンベルの広報、永島祥子さんをゲストにお迎えして

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンは、永島祥子さんのインタビューです。
永島祥子さん

 第48次・南極越冬隊の隊員で今年帰国された、株式会社モンベルの広報、永島祥子(ながしま・さちこ)さんをお迎えし、南極での仕事や暮らしについてうかがいます。

南極で越冬して、今年帰国しました

●前回は南極に行かれる前にお電話でお話をうかがったので、「どうだったかなぁー」とワクワクしながら今日という日を待っていました!

「ありがとうございます!」

●今回の越冬隊は合計で何名の方が行かれていたんですか?

「越冬したのは35人です」

●第48次の観測隊に関しては、過去最多で女性が7人っていうお話だったんですけど、越冬隊は永島さんを含めて女性は何人だったんですか?

「2人でした。あとの5人は夏隊といって、夏の間だけ南極へ行って、2ヶ月くらい滞在をしたら行った船でそのまま帰ってくる人たちです」

●もう1人、一緒に越冬された女性の方っていうのは、初参加だったんですか?

「はい。夏冬合わせて初参加でした」

●じゃあ、永島さんに頼りっきりだったんじゃないですか?(笑)

「そんなことないですよ!(笑) 逞しいお医者さんでした」

●一度行っていると、頼られちゃうという面もありますよね。

「自分が1回目にものすごく頼りにしたから、それを覚えていたので、逆の立場なんだなぁと。でも、行ったといっても1回じゃないですか。そんなに経験があるわけでもないし、大丈夫かなぁって不安でした(笑)」

●(笑)。永島さんも含めて、それぞれ越冬隊で行っていらっしゃる隊員の方達っていうのは、何らかのスペシャリティを持っていらっしゃって、研究だったり観測といった感じでそれぞれの持ち場が違うんですよね。

「そうですね。1つの仕事に対して1人っていうか、1つの仕事に複数でかかるっていうのがほとんどなくて、仕事の数がものすごく多いので、例えば、観測の人だったら、1人で10項目の観測を担当したりっていうことになりますね。で、観測隊って観測に行くので、観測をするための人がいるんですけど、その人達の生活を支えるために設営隊っていって、水や電気を作るところからやる、地盤を支える人達がいるんですよ。だから、その人たちもそれぞれの専門で行くんですけど、電気屋さんは電気だけやっているのかっていったら、それでは人が全然足りないので、車の整備をしたり、土木作業をしたりとか、色々なことをやります」

●永島さんはどのようなことを担当されていたんですか?

「私は地検部門っていう観測のほうで行ったんですけど、例えば夏の間だったら、コンクリートを打ったりとか、15メーターかける25メーターくらいの大きな倉庫のコンクリート打ちとか、倉庫の解体作業で鉄パイプを切ったりもしました(笑)」

●(笑)。永島さんって小柄でいらっしゃいますよね。そんな永島さんがコンクリート打ちをやったりするんですね。

「一日中コンクリート打ちをやりました。肩が痛くて本当に大変でしたけど、面白かったですよ(笑)」

●(笑)。南極へ行くと、女性も男性も関係なくスタッフとして作業されるんですね。すごく初歩的な質問なんですけど、南極の昭和基地っていうのは南極のどの辺にあるんですか?

「南極ってお餅みたいな形をしているんですけど、地球の中での位置で言えば南アフリカの下くらいですね。で、昭和基地は南極大陸の上にはなくて、大陸のすぐ側の島の上にあります」

●では、基本的には氷が解けてしまっていれば、南極大陸にはないんですね。

「そうですね。大陸上ではないですね」

●そこへ行くまでは飛行機と船で行かれるんですか?

「南極まで行くには、日本からだと、まず飛行機でオーストラリアのパースっていう町まで飛んで、近くにフリーマントルっていう港があるんですけど、そこからしらせに乗って行きます」

●日数はどれくらいかかったんですか?

「日本を出たのが11月の終わりで、オーストラリアを出たのが12月3日で、昭和基地に着いたのが12月20日前後なので、2週間ちょっとくらいです」

●それだけの時間をかけると、ワクワクもドキドキも増しながら向かって行く感じでしょうね。

「実は、船の上もやることがものすごくいっぱいあって、まずは、訓練っていうか、自衛隊の船に乗せてもらうんですけど、例えば、人が落ちたときにはどうするのかといった訓練とか、救命胴衣の着方とか、発煙筒のたき方とか、そういう訓練をまず自衛隊の人たちから受ける時間があります。あとは、南極に着くとすぐに観測の人たちは野外に出て観測を始めたりするんですけど、そのための食料を船の上で肉のブロックとかでもらって、ブロックのままではすぐに使えないので、船の上で小分けしたり、そういった準備があるんですね。なので、2週間って結構あっという間ですし、その間に南緯40度から60度の海がすごく荒れるところを越えなければいけないんですよ。で、荒れているところでは、ご飯を食べられない人は食べられないし、作業なんかもできる状態ではないので、それを除いたわずかな時間にやることを一生懸命やって、何とか入るっていう感じですね」

●では、オーストラリアに飛行機で着いた時点で、試練が始まっているんですね(笑)。

「はい、試練が始まります(笑)。すぐ船も揺れるし、船酔いする人は本当につらいですね」

●それで、やっと陸地に着いたと思ったら南極ですもんね(笑)。更なる試練がどんどんと押し寄せてくるんですね。

氷上での作業・移動

●永島さんは観測がメインのお仕事だったわけですけど、どういった作業が一番大変でしたか?

「普段は昭和基地の中に観測機器があって、それをメンテナンスするんですね。私、主に地震の観測を担当していたので、基地にある地震計がちゃんと動いているかとか、データがちゃんととれているかっていうのを、チェックするっていうのを主に基地ではやっていました。そのほかにも野外に出て行って、外で観測をするというのもあって、そうすると、野外にも地震計が置いてあって、基地から遠いところだと80キロとか離れているようなところまで行って、データを吸い上げたり、バッテリーを交換したりしていました。ほかに地震以外にも、重力を量ったり、車のカーナビや携帯電話で使われているGPSで観測とかもあります」

●野外に観測に行かれるときは、当然1人ではないんですよね?

「はい。1人では絶対にダメで、大体8人くらいで行っていましたね。単独行動は禁止で、2人以上ならいいので、近場は2人っていうときもあるんですけど、80キロとかの遠くになると、1つの観測を何日かかけてやるんですよ。そうなると、8人〜9人のパーティーで準備して出かけてという感じになります」

●永島さんのブログを拝見すると、普通に考えるとアメリカの広大な大陸をキャンピング・カーを連ねて「おでかけしましたー」っていう雰囲気にもとれるんですけど、でも、そこはマイナス何十度の南極なわけで、実際はどんな感じなんですか?

「野外は基地と比べて景色がずっと違うので、いったん出てしまうと、すごく楽しいんですよね。ただ、行くまではすごく大変で、私たちが出かける場所の1つは海を渡って南極大陸の上に行くんですけど、その手前では絶対に海を通って行かなきゃいけないんですね。で、一番遠いところで80キロっていいましたけど、その80キロってずっと海の上なんですよ。凍った海の上をずっと走っていくので、ただ行ったらいいというわけではなくて、いくら氷が張っているとはいえ、海なので、いつ割れてもおかしくないっていう状況だから、そのためには500メートルおきにルート工作っていって、1個ずつ旗を立てて、そこの氷の厚さを測って記録して、地道に道を作らないとそこまでいけないんですよ。それが大変だし、『怖いなぁ』と思いながらずっとやっていましたね」

●海の上と陸とでは氷の張り方って違うんですか?

「南極大陸の上の氷とは違いますね。で、海の氷って夏の間は海水でちゃぷちゃぷなって最悪解けちゃうんですよ。季節が夏だと昭和基地の周りの海はゆるいので、雪上車で出るっていうのは危なくてできないので、季節が進んで寒くなって、ちょっとずつ氷が成長してくると、厚さを確かめながら、まず軽いスノーモービルとかから始めて、若干重い雪上車とかに変えていく感じなんです」

●行きはそれで大陸のほうに渡ったとしても、帰りにまた同じコンディションとは限らないんですよね?

「そうなんですよ。だから、80キロ先に行ったところで天気が悪くなって、初日から予定通りの行動ができなくて、本当は初日に60キロくらい先まで行こうと思っていたんですけど、行っている途中で雪が降り始めて、周りが全然見えなくなっちゃうようなホワイトアウトになって、危なそうだったから予定を変更して、1個手前の宿泊できるところに入ってやり過ごしたりしました。で、その先へやっと行けたと思ったら、3日間くらいずっと天気が悪くて動けなくて、ブリザード停滞、略してブリ停滞っていうんですけど(笑)、食料も不安になってくるし、水は作らないといけないしっていう感じで(笑)」

●にこやかにお話されていますけど(笑)、相当ハードですよね。映画の世界でしかイメージできないような想像を絶する世界ですね。

「安全に帰ってこなければいけないので、その時その時でどう判断するかっていうのが、ものすごく大変でした。命を失ってはいけないので、帰るっていう判断もあるだろうし、天候を見ながら動くっていう感じですね」

南極でのフリー・タイムは何しているの?

永島祥子さん

●すごくスリリングで、体力も気力も相当消耗するような南極でのお仕事なんですが、フリー・タイムもないわけではなく、永島さんのブログとかを拝見していると、結構遊んでいることもあって、「外で遊ぶのが大好きな人たち。『今日は暖かくてよかったね』といいながら明るい時間を目一杯遊んだ最高の休日だった」と書いてあるんですが、気温はマイナス18度なんですよね(笑)。

「はい(笑)」

●しかも、南極での出来事です(笑)。外で遊ぶのは大好きかもしれないけど、南極ですからね。しかも、そのときには自転車に乗っています。冒険なさっている方で、極地に自転車やバイクで行かれているかたって言うのもこの番組でゲストにお迎えしていますが、過酷なお仕事の合間に遊びたくって自転車に乗った方は初めてです(笑)。

「そうですか(笑)。いや、でも南極で自転車に乗るのは本当に面白いんですよ(笑)」

●(笑)。どう違うんですか?

「陸の上でもいいんですけど、特に海の上を走るのが最高に楽しいんですよね。ただ単にばかげているっていう要素も大きいとは思うんですけどね(笑)。氷山とかもメチャクチャキレイですし、動物にも会えますし」

●かわいらしいアザラシちゃんの写真もありましたけど、普段は潜っているアザラシが、息をするために出てくる瞬間って分かるんですか?

「彼らが開けるんですけど、穴が開いているんですよ。海とかで走って遊んでいると、必ずそういう穴が見つけられるんですよ。周りにフンがあったりもするんですけど、その穴をまず探して、穴のところでアザラシが出てくるのを待っていると、空気を吸いに出てきたりするんですよ」

●アザラシもビックリするでしょうね(笑)。そういう氷の世界で、ほかの生き物に出会うって気持ちがほっとするというか、感じるものがあるんじゃないですか?

「そうですね。安心しますね。あと、力づけられるっていうか、人間があれだけ暖かい建物とかを建てて、一生懸命生きないと生きられないような場所で、鳥もそうですけど、彼らは体1つで普通に何事もないように飛んだり、アザラシなんかは春になると、しょっちゅう海氷の上で無防備に昼寝をしているんですよね。近づいていっても、ずっといびきをかいたまま寝ているんですけど(笑)、そうやって生きているのってものすごいなぁと思いますね」

南極が好き。それ以前に地球が好き

●永島さんは南極で2回、越冬されているわけですけど、もしも、「また越冬しない?」っていう話が来たならば、どうしますか?

「どうするんでしょうねー。そのときの状況によるとは思うんですけど、でも、基本的に私は南極がすごく好きなので、状況が許せば行きたいような気がします」

●永島さんにそこまで言わせてしまう南極の魅力ってなんですか?

「好きなポイントって前回も今回も変わらないんですよね。南極に行くと、地球をそのまま感じられるんですよ。厳しい世界なんですけど、私たちの一生からは想像できないくらい大昔から、多分この景色はこのままだったんだろうって、何億年前までさかのぼって想像できて、大きな地球、温かい地球に自分が住んでいるんだなぁっていう意識が南極へ行くと強まる気がするんですね。南極が好きなんですけど、私、それ以前に地球がすごく好きなので、それを一番感じられる場所だからですかね」

●そんな南極も含めて、今、色々な環境問題が私たちの目の前に迫っているじゃないですか。それに対して、永島さんはどうすればいいとお考えですか?

「まずは、自分ができる小さなことをやるっていうのはずっと思っているので、節電、節水とか本当に小さなことですけど、それを個人的にやっていますし、ずっとやろうと思っています。あと、具体的に動くのってすごく難しくて、私も日々、何が出来るのかなぁっていうのは考えていて、とりあえず南極のことを伝えると、南極を通して地球のことを考えたりとか、子供達だったらいずれ自分達で行ってみようとか、そういう気持ちに繋がればいいなぁと思って活動しています。やっぱり1人1人の人が地球のことをもうちょっと考えるようになると、地球に対する人間の行為を考えることに繋がると思うので、自分にできるのはまずそこなのかなぁと思っています」

●永島さんのお話をうかがっていると、生きるために必要な水の確保とか食料の確保とかが、私たちの普段の生活ではあまり考えられていないっていうのが問題なのかなぁという気がします。都会にいる限りは当たり前に水が飲めてしまったり、ものが食べられてしまうので、南極までは行かなくても、森の中に出かけてみるとか、自然の中で1泊キャンプをするとか、それだけでも少しは変わりますよね。

「そうですね。物がないとどうなるのかっていう状況を知るのは、色々と想像できるようになるし、いいと思いますね」

●そういう自然の中へ行くときに最低限必要なものは、モンベルに全部揃っていますので、それを持って、例え、外がマイナス18度でも自転車に乗れちゃうくらい元気に楽しんでいただければと思います。永島さん、またお話を聞かせてくださいね。今日はどうもありがとうございました。

このほかの永島祥子さんのインタビューもご覧ください。
AMY'S MONOLOGUE〜エイミーのひと言〜

 永島さんのお話によると、昭和基地内には越冬生活をより豊かにするために、「生活諸係」という、農協、漁協、アマチュア無線や映画など、様々な係があるそうです。そしてその中には永島さんがはじめたボルダリング(壁登り)同好会「おさるクラブ」ほか、なんと「NPO法人日本けん玉協会南極昭和基地支部」という由緒正しいけん玉クラブまであるそうで、永島さんは支部長も務められたそうです!!ちなみに、永島さん曰く、けん玉はけっこう体力を使うものだそうですよ(笑)。
 そんな永島さんは「南極では自然に合わせて生きなければならないので、人間の力がいかにちっぽけなものかを実感した」ともおっしゃっていました。“自然に合わせて生きる”・・・今の私たちの生活、そして私たちが抱えている環境問題を考えると、この言葉は胸に刺さるようでした。私たち一人ひとりがちょっぴり“自然に合わせて生きる”ことを考え、それを実行したなら、もしかしたらほんの少し世の中が変わるのかもしれませんね。

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(株)モンベル情報&広報の永島祥子さん情報

「南極通信」
 第48次南極地域観測隊の隊員として南極で越冬、今年春に帰国された永島祥子さんの南極での奮闘振りや暮らし振りを掲載。永島さんのリポートに加え、写真もふんだんに掲載されているので、ぜひチェックしてください!
 南極通信http://www.montbell.jp/generalpage/index.php?general_id=10

「モンベルクラブ」会員募集中
 モンベルでは、随時「モンベルクラブ」の会員を募集しています。
 入会費は、無料、年会費は1,500円。会員になると、内容充実の会報誌『OUTWARD』やカタログが送られてくるほか、様々な特典があります。ちなみに、現在、サマー・キャンペーン中で、この機会に入会すると、人気のウォルディーズ・サンダルが半額で購入可能!
 尚、入会はモンベルのホームページ、または、全国のモンベルクラブショップの店頭でどうぞ。

「モンベルクラブ恵比寿店」リニューアル・オープン!
 モンベルクラブ恵比寿店が、9月12日にリニューアル・オープンする予定です。JR恵比寿駅東口の正面に売り場面積2倍となってお目見えします。乞うご期待!

「フレンドフェア」開催
 9月27日〜28日に東京流通センターで「フレンドフェア」を開催。ゲームコーナーやフードコートほか、お買い得なアウトレット商品など盛りだくさん! ぜひお出かけ下さい。

 モンベルのホームページhttp://www.montbell.com/

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. NEVER / HEART

M2. COLD AS ICE / FOREIGNER

M3. IT'S A HARD LIFE / QUEEN

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. FROZEN / MADONNA

M5. WAITING ON THE WORLD TO CHANGE / JOHN MAYER

油井昌由樹ライフスタイル・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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