働かない「働きアリ」!?

2003年11月23日放送

 冬を前に動物たちは冬ごもりの準備に忙しい頃だと思うんですが、そんな時期に思い出すのが「アリとキリギリス」というお話。毎日歌って楽しく過ごしていたキリギリスに対し、アリはせっせとエサを巣に運んで冬に備えていた、そんなお話もあって、アリには「働き者」というイメージがありますよね。ところが最近の研究で「働きアリ」の中でもほとんど働かないアリがいることが分かりました。ここで、働かない「働きアリ」がいることを発見した北海道大学・大学院・農学研究科の助手・長谷川英祐さんに電話でお話をうかがいました。

●早速なんですが働かない「働きアリ」をどういう方法で見つけられたんですか?

「一部の者が働いていないというのは、大分昔からそういうものがいるんじゃないかと言われていて、若干のデータもあったんですね。本当にそういう者がいるのかどうかを確かめるために、1匹1匹に個体を識別できるようにマークをつけてですね、ずっと長い時間観察するという方法を使って見つけました」

●長い時間ってどれぐらいなんですか?

「トータルで6ヶ月くらい観察をしていて(笑)、1日3時間位ですね」

●何匹位にマークをつけたんですか?

「使ったアリはあまりたくさんいなくて、1つのコロニーが30〜40匹位の個体のコロニーを使いました。これにペイント・マーカーで小さい点をつけて、その色と場所の組み合わせでどの個体かを分かるようにしたわけです」

●その結果、働きアリと言われている割には全員が全員働いているとは限らないということが分かったわけですね。

「そうですね。結局形の上で女王アリと違っていて、『働きアリ』と言っているものの中で、大体1割から2割くらいはほとんど働かず、コロニーのためになるような行動をほとんどしていません。コロニーの中にいてじっとしていたり、自分の身体の掃除みたいなことばかりしているわけです。ですから、何か意味のある行動をしているかどうかは本当には分からないわけですね」

●じゃあこれはまだまだ研究の余地ありということですね。

「そうですね」

●長谷川さん御自身としてはそれらのアリさん達をどのように見ています?

「可能性はいくつかあってですね、例えば歳をとっているとか、病気であるといった理由で働けないのかもしれないし、もしくはコロニーの他の個体におんぶに抱っこで、コロニーにとってよくないが寄生者としてコロニーの中にいるという可能性がありますね。本当の意味での怠け者ですね。最後にこれが事実だったら一番面白いんですが、そういう者がいることでコロニーにとって何らかのいいことがあって、働いていないように見えるんですけど、本当は役割があるという可能性もありますね。これだったら一番面白いと思っています」

●実はですね、この働きアリというのと同じように働きバチっているじゃないですか。働きバチのことも番組スタッフ一同、気になり始めているんですけど(笑)、アリに続いてハチというのはどうなんですか?

「実は、ハチではミツバチを使った研究が行なわれていまして、その研究ではミツバチもやはり1割程度の個体はほとんど働かないことが分かっていますね(笑)」

●やっぱりいるんだ(笑)。

「ただこれは論文として公表されていないデータなのでまだ公になっていないんです。アシナガバチの研究では巣の上にいる時は働いているんですけど、餌をとりに外へ行った時はなにもしないで日なたぼっこをしていたり、30分くらいボーッとしていて帰ってきてしまうなんてこともありますね(笑)」

●(笑)。よく人間でもありますよね。営業で外回りの人とかで・・・(笑)。

「僕もまさにそれを思い浮かべました(笑)」

●でもこれはアリさんとハチさん達の働かないパーセンテージも似ているということもあって、同じ理由で社会的構造があるとしたならば面白いですね。

「そうですね。ある特定の生き物にある特別な問題ではなくて、集団を作って暮らす生き物全てに共通する問題だったら、本当に面白いことだと思います」

●フリントストーンはこれからもずっと注目していきたいと思いますので、長谷川さんも定期的に番組で報告をしていただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

「ありがとうございました」

 北海道大学・大学院・農学研究科の助手・長谷川英祐さんに働かない「働きアリ」についてうかがいました。

閉じる